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基板厚の決め方:厚みの内訳と実在する呼び厚

設計ガイド2026-10-05SKPCB技術チーム
基板厚の決め方:厚みの内訳と実在する呼び厚

基板厚の指示が設計審査で差し戻されるとき、話の入り口はほぼ毎回ずれています。図面には仕上がり厚が書かれ、製造側は「その厚みは作れない」と返し、設計側の最初の反応は「公差を少し広げられないか」になる。

公差を広げてもこの種の問題は解決しません。ここでは二つのまったく別の問いが同時に投げられているからです。

  • 問い A:図面に書いた厚みは、どの公差で判定されるのか。
  • 問い B:図面に書いた厚みに着地する積層構成が、そもそも組めるのか。

問い A には公開された答えがあります。/ja/tolerance/ に掲載のとおり、基板厚公差は ±10% または ±0.005″(≈0.13 mm)のいずれか大きい値です。この判定がどう効くか、どう測るか、どう合否を出すか、どういう場合に厳しくする価値があるかは仕上がり厚公差の管理と合否判定で扱い済みなので、本稿では繰り返しません。

本稿が扱うのは問い B だけで、その答えは公差とは無関係です。作れる仕上がり厚は連続した範囲ではなく、点の集まりです。 SKPCB が公開している基板厚範囲は 0.2–6.0 mm(最大 6.0 mm、/ja/capabilities/ 参照)ですが、これは対応幅の表明であって、その区間のどの小数も作れるという約束ではありません。作れるのは、手元のコア材・プリプレグ・銅厚でちょうど足し合わせられる値です。足し合わせられない数字を図面に書けば、公差をどれだけ広げても、その値を中心に持つ積層は存在しません。

厚みの内訳:仕上がり厚は何の合計なのか

仕上がり厚を項目に分解すると、問い B は勘の話から計算の話になります。多層基板では寄与は五種類です。

第一、内層コア材。 コア材は硬化済みで入荷する両面銅張積層板で、絶縁層厚と両面のベース銅厚は購入時点で決まっています。N 層の基板には何枚かのコア材が入り、それぞれが固定値を寄与します。コア材の厚みは有限段階しか存在しません——これが内訳のなかで最も交渉できない項目で、銅張積層板メーカーの標準規格に由来し、プレス時に調整できるものではないからです。

第二、層間プリプレグ。 プリプレグは積層プレス時に樹脂が流動して圧密されるため、プレス後の厚みはプレス前の呼び厚より小さくなり、その減り方は隣接銅層の銅分布とプレス条件に依存します。内訳のなかで唯一わずかな連続性を持つ項目で、層間ごとのプリプレグ枚数と種類を変えれば総厚を少し上下できます。ただし調整の刻みもやはり離散的で、増減できるのは「一枚」単位であって任意の小数ではありません。具体的な厚み段階とプレス後の値は実際の積層構成に対する製造審査で確定するため、本稿では数値を示しません。

第三、銅。 内層銅厚はコア材のベース銅、外層銅厚はベース銅+スルーホールめっきとパターンめっきによる増厚です。銅厚自体も離散段階です(公開範囲は 0.5 oz から >12 oz で、>12 oz は製造審査が必要な区分、16/18 oz は量産実績あり)。銅厚選定の設計規則は銅厚の選択肢と設計規則にあり、本稿では内訳の一項目として扱います。外層銅が厚いほどめっき寄与が増え、総厚は上がります。

第四、ソルダーレジスト。 レジストは外層銅と露出基材を覆い、薄いながらゼロではない厚みを寄与します。公開規定との関係が重要で、/ja/tolerance/ の最小基板厚はソルダーレジストを含む表現です。つまり厚みの内訳はレジストまで含めた仕上がり基板で締めるものであり、プレス直後の素板ではありません。

第五、表面処理。 表面処理の種類によってパッド上に残る金属厚は異なり、総厚への寄与も変わります。通常は内訳で最小の項目ですが、薄い基板ではゼロ扱いできません。

この五項目の合計が仕上がり厚です。注意すべきは、内訳のどれも「仕上がり厚」そのものではないことです。仕上がり厚は五項目の和にすぎません。だからこそ、積層に制約を与えずに仕上がり厚だけを図面で指定することは、製造側に解くべき方程式を渡すことと同じになります。

なぜコア材とプリプレグは作れる厚みを離散的な格子にするのか

ここで各項目の離散性をまとめて見ます。コア材の厚みは段階的、プリプレグの調整単位は一枚、銅厚も段階的——したがって五項目の和も有限個の点にしか着地できません。

この点の集合が作れる呼び厚の格子であり、その形から実務的に三つのことが決まります。

格子の間隔は均一ではありません。 ある厚み帯では利用できる材料段階が密で、隣り合う可能な点がごく近くに並びます。別の帯では段階が疎で、隣の点までに明確な跳びが現れます。だから「X より少し厚くしてほしい」という依頼は、ほとんど無償の場合もあれば、積層全体の組み替えを要求する場合もあります。

層数が増えると格子は粗くなります。 層数が増えれば項目が増え、各項目の段階制約が積み重なるため、成立する組み合わせはむしろ減ります。層数は本稿の入力条件であって主題ではありません。層数そのものを高くしたときに先に効いてくる制約は、本日の同サイト別稿(高層数基板の製造制約)と多層基板の積層設計ガイドを参照してください。

格子を外すと「わずかに公差外の基板」ではなく、技術問い合わせが返ってきます。 実務上もっとも覚えておく価値がある点です。図面の呼び値が二つの可能な点の間にある場合、製造側の選択は二つです。近い点で作る(呼び値と実際の中心が一致せず、公差枠の一部が無償で消費される)か、どの入力を変えるか設計側に聞き返す。正しいのは後者ですが、日程を消費します。

層数と銅厚が格子全体をどう動かすか

格子は固定ではなく、二つの入力とともに動きます。

層数は格子の位置と密度を動かします。 内層が一対増えるたびにコア材一枚とプリプレグ一層が増え、到達できる総厚の下限が上がります。したがって同じ仕上がり厚でも層数が違えば問題の難易度はまったく別で、低層数なら余裕、高層数ではすでに下限付近ということもあります。その段階ではプリプレグは最小まで減らされており、さらに薄くするにはコア材の段階を動かすしかありません。

銅厚はオフセットを動かし、プリプレグ需要も変えます。 厚銅は銅の項目を大きくするだけではありません。銅が厚いほど樹脂が埋めるべき銅の段差が大きくなり、充填と絶縁の確保のためにプリプレグが増量または厚手化されることが多い——つまり銅厚が総厚に与える影響は銅そのものの厚み以上になります。厚銅基板の能力範囲は /ja/products/thick-copper-pcb/ にあります。

この二つの入力は厚みより先に確定している必要があります。 本稿が示す順序規則はこれ一つです。先に層数と銅厚を決め、格子がどこに来るかを見て、その点のなかから呼び値を選ぶ。逆順——きれいな仕上がり厚を先に決めてから層数と銅厚を合わせにいく——は、ほぼ必ず格子に当たります。

両端での挙動:薄いとき・厚いときに先に効くのはどの項目か

格子の性質は両端で異なり、効いてくる項目も変わります。

薄い側(下限 0.2 mm 付近)。 ここで制限するのはプレスではなく、剛性と取り扱い性、そしてソルダーレジストと表面処理がもはや無視できないという事実です。薄い基板は積層後の工程で何度も保持・搬送・洗浄され、薄いほど反りと変形が後工程の歩留まりに効きます(対策は多層基板の銅分布と反り管理)。薄い側には見落としやすい帰結もあります。判定が「±10% または ±0.005″ のいずれか大きい値」である以上、薄い基板では効くのが百分率ではなく ±0.005″ という絶対値のほうになることが多い——つまり薄い基板の相対公差は実際には緩くなります。これは公開規定の構造であって譲歩ではありません。詳細は仕上がり厚公差の管理と合否判定に従ってください。

厚い側(上限 6.0 mm 付近)。 ここで効くのは通常プレスではなく穴あけです。基板が厚いほど同じ穴径に対するアスペクト比は大きくなり、SKPCB の標準最大アスペクト比は 10:1(PCB-AR、標準区分)です。つまり厚い基板と小さい穴は同時に無条件では成立しません。厚みが決まれば、作れる最小穴径の下限がアスペクト比から逆算されます。機械加工の最小穴は標準 0.2 mm(0.15 mm は製造審査が必要な区分)です。厚い側の第二の制限は銅と充填から来ます。厚銅の厚板はプリプレグをより多く必要とし、総厚がさらに押し上げられて上限に当たりやすくなります。

両端に共通するのは、境界に近いほど格子が疎になり、選べる呼び値が減り、「少し調整する」余地が小さくなることです。設計そのものが境界に張り付いているなら、見積り段階で厚みを許容範囲として示し、着地点を技術側から返させるほうが、正確な呼び値を出して差し戻されるより早く済みます。

連動:厚みが決まるとアスペクト比・最小穴・インピーダンス余裕が同時に書き換わる

厚みは独立した仕様ではなく、他の三つを固定します。

アスペクト比と最小穴。 前述のとおり、基板厚÷最小穴径は標準の 10:1 を超えられません。厚みが決まれば穴径の下限が決まり、逆に小さい穴が必要なら、より薄い基板か製造審査区分(レーザー最小穴は標準 0.1 mm、審査で 0.075 mm)を選ぶことになります。

インピーダンス。 インピーダンスは線幅・銅厚・絶縁層厚・比誘電率で決まり、絶縁層厚は厚みの内訳のプリプレグとコア材そのものです。総厚が固定されると絶縁層厚を動かす自由度が圧迫されます。ある差動対を目標インピーダンスに合わせるには通常プリプレグの段階を入れ替えますが、その入れ替えが総厚を壊すことになる。インピーダンス公差は ±10%(標準)/ ±5%(製造審査)で、等級と判断はインピーダンス制御基板の公差等級にあります。実務的な意味は明快で、インピーダンス要求が厳しい基板では総厚を固定値ではなく範囲で指定すべきです。でなければ二つの制約が互いを締め殺します。

積層プレスと位置合わせ。 プリプレグ枚数の変更は積層時の樹脂流動と層間ずれの条件を変え、位置合わせ余裕も動きます。本稿ではプレス条件は扱わず、対策は多層基板の積層位置合わせ管理を参照してください。

この三つの連動が、「厚みだけ変更」という依頼に対して製造側が積層全体の再審査を求める理由です。厚みは単独で編集できる欄ではありません。

「実在する」呼び厚を出すために:見積り前に渡す四点

以上を実行可能な形にまとめます。見積りや製造審査の前に設計側が渡すべきものは、厚みの数字ではなく次の四点です。

  1. 層数と各層の役割割り当て。 何層で、どれがプレーンか。これが格子の位置と密度を決めます。
  2. 内層・外層の銅厚要求を個別に、 あわせて通電容量や放熱が厚銅を要求しているかどうかも。厚銅は銅の項目とプリプレグの項目を同時に押し上げます。
  3. 厚み要求の形(固定値か範囲か)と、その値である理由。 厚みがコネクタ、圧入部品、カードスロット、筐体はめ合いから来ているなら、そのはめ合い条件を述べるほうが数字より役に立ちます。技術側は格子上の最も近い点を選び、はめ合いが成立するかを判断できます。慣習で引き継いだだけの厚みなら範囲で出してください。
  4. 厚みと同時に存在する他の硬い制約:最小穴径、インピーダンス要求、表面処理。 この三つは厚みと連動しているため、まとめて渡されて初めて成立する積層を一回で組めます。小分けに渡すと組み替えが繰り返されます。

この四点が揃えば、製造審査の出力は具体的な積層構成と格子上に乗った呼び厚になり、公差についての往復にはなりません。積層図の放行時に何を確認するかは多層基板の積層図リリースチェックリストにあります。能力範囲と材料系は /ja/capabilities/ と /ja/products/multi-layer-pcb/、着地点を直接返してほしい場合は /ja/quote/ から提出してください。

セルフチェック

  • 既存記事との重複:pcb-finished-thickness-tolerance-control との境界を維持——同記事は判定規定・測定・合否・厳格化の代償を扱い、本稿は呼び厚の離散格子と選定順序を扱う。判定基準は再掲せず三箇所で同記事に戻している。pcb-copper-thickness-options-design-rules との境界:銅厚は内訳の一項目としてのみ登場。multi-layer-pcb-stackup-guide との境界:積層設計手法は再掲しない。impedance-control-pcb-tolerance-classes、multilayer-lamination-registration-control、multilayer-copper-balance-warpage-control との境界:連動箇所で一文の誘導のみ。
  • 同日同サイト重複:slot 1(高層数基板の製造制約)と slot 2(ステンシル洗浄と判退)は主キーワード・検索意図・中心的な問い・目標ページ・カバー画像がいずれも異なる。slot 1 と共有する事実は「厚みは層数とともに積み上がる」のみで、slot 1 はそこから穴あけアスペクト比へ、本稿は呼び値の選定へ向かう。
  • キーワードの過剰使用:主キーワード族(基板厚/仕上がり厚/呼び厚)は自然な密度で、密度調整のための詰め込みはない。
  • 数値の適合性:すべての数値は公開済み /tolerance/・/capabilities/ の内容または CLAIM_REGISTER の凍結項目に由来。製造審査区分の値(機械 0.15 mm、レーザー 0.075 mm、±5% インピーダンス、>12 oz 銅厚)は本文で区分を明示。材料厚み段階、プレス後減少量、めっき増厚量、比誘電率、Tg、プレスプロファイル、歩留まり、納期、設備型式、顧客事例はいずれも記載しない。
  • 内部リンク:本節のリンクは 12 本(パス参照を含む)、すべて /ja/ 接頭辞で out/ja/ 配下に実在を確認済み、≥3 を満たす。/industries/* へのリンクはない。
  • FAQ と本文の整合:7 問すべて本文で論証した内容に対応し、本文が支持しない新主張はない。
  • 素材の分離:カバー qua-img6.jpg、SHA-256 3c78d829…、本日の slot 1 / slot 2 のカバーとパスもハッシュも異なる。既定 banner / ax41 / og-cover ではない。
  • 言語品質:日本語ネイティブ校閲が未了のため REVIEW_REQUIRED。特に「呼び厚」「コア材」「プリプレグ」「アスペクト比」「製造審査」の訳語統一と、敬体の統一を確認のうえ公開すること。

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FAQ

Q1:1.55 mm は作れないが 1.6 mm なら作れる、と言われるのはなぜですか。

作れる厚みは、手元のコア材・プリプレグ・銅厚から足し合わせられる点の集まりであって、連続した範囲ではないからです。ごく近い二つの呼び値が、一方は格子点に乗り、他方は二点の間に落ちることがあります。その場合、製造側は近い点で作る(呼び値と実際の中心がずれ、公差枠の一部が無償で消費される)か、どの入力を変えるか問い返すかになります。実際の着地点は、材料の入手状況に対する製造審査で確定します。

Q2:基板厚公差を広げれば「この厚みは作れない」は解決しますか。

通常は解決しません。公差は作られた基板をどう判定するかを定め、格子は積層がそもそも組めるかを定めます。呼び値が格子の外にあるなら、公差を広げても中心からずれた結果が合格しやすくなるだけで、その呼び値が作れるようにはなりません。判定自体は ±10% または ±0.005″ のいずれか大きい値で、詳細は仕上がり厚公差の管理と合否判定にあります。

Q3:公開されている 0.2–6.0 mm はどういう意味ですか。この区間ならどの厚みでも作れますか。

対応範囲とその上下限(最大 6.0 mm、/ja/capabilities/ 参照)であって、区間内で連続に選べるという意味ではありません。使える値は、その層数・銅厚で足し合わせ可能であることに加え、厚い側ではアスペクト比の制限(標準最大 10:1)も満たす必要があります。

Q4:少し薄くしたいだけなのに、なぜ積層全体を再審査するのですか。

厚みは五種類の寄与の合計であり、薄くする分はどれかから取るしかないからです。プリプレグ枚数を減らす(プレスと位置合わせの条件が変わる)、薄いコア材に替える(絶縁層厚が変わりインピーダンスが変わる)、銅を減らす(通電容量と放熱が変わる)。いずれも他の仕様を引っ張るため、厚みは単独で変更できる欄ではありません。

Q5:基板厚公差の「ソルダーレジストを含む」は重要ですか。

重要です。/ja/tolerance/ の最小基板厚はソルダーレジストを含む表現であり、厚みの内訳はレジスト付きの仕上がり基板まで通して数えます。薄い基板ではレジストと表面処理の占める割合が無視できないため、素板で見積もると系統的に小さく出ます。

Q6:インピーダンス要求が厳しい基板では厚みをどう指定すべきですか。

インピーダンス目標とあわせて、許容範囲で指定してください。インピーダンスは絶縁層厚に依存し、絶縁層厚は厚みの内訳の主要項目です。総厚を固定値で止めると、インピーダンス調整に必要な材料入れ替えが総厚を壊し、二つの制約が互いを締め殺します。インピーダンス公差は ±10%(標準)/ ±5%(製造審査)で、インピーダンス制御基板の公差等級を参照してください。

Q7:厚い基板が最小穴径を制限するのはなぜですか。

アスペクト比=基板厚÷穴径であり、SKPCB の標準最大アスペクト比は 10:1 です。厚みが決まれば、この制約から作れる最小穴径の下限が直接導かれます。機械加工の最小穴は標準 0.2 mm、レーザー最小穴は標準 0.1 mm で、それより小さい値は製造審査区分です。厚い基板と小さい穴は同時に無条件では成立しません。

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