銅厚は寸法であり、選択肢の一つではありません
見積フォーム上の銅厚は 0.5oz から 12oz 超まで並ぶプルダウンで、選ぶのに 1 秒しかかかりません。しかし製造側では銅厚は寸法であり、同時に三か所へ効いてきます。銅の断面積(電流容量と熱拡散)、エッチングで除去すべき銅の量(どこまで細い線が成立するか)、そして積層の厚み積算(基板厚、ひいてはアスペクト比)です。このプルダウンを変えることは、三つを同時に変えることを意味します。
まず用語を揃えます。ベース銅と仕上がり銅厚は同じ値ではありません。 カバーの断面図では外層に「Cu 18µm + plating」と記され、寸法は 35µm です。外層の銅厚は、積層前の銅箔にスルーホールめっき時の析出銅を加えたものです。内層にはこのめっき工程がないため、銅箔厚がそのまま仕上がり厚になります。「外層 1oz」と言う場合、線幅の後退量を見積る対象はめっき後の厚みであり、銅箔の規格値ではありません。内層と外層の規則が別掲されている理由もここにあります。
Sunking の /capabilities/ に公開されている全体ウィンドウは 0.5oz から 12oz 超で、内外層いずれも標準 3oz、Advanced 12oz、R&D 12oz 超に区分されます。厚銅製品ページの常用範囲は 3oz から 12oz 超、1〜16 層、基板厚 0.8〜6.0 mm、最小線幅 6 mil です。この二組は併せて読む必要があります。厚銅品の 6 mil という下限は、「銅厚が上がれば線幅は後退する」という原則が製品仕様に現れた結果そのものです。
標準と Advanced の境界はどこか
/capabilities/ の詳細仕様表は、標準(Standard)・Advanced・R&D の三段階で製造ウィンドウを示しています。銅厚に関わる行は次のとおりです。
| 項目 | 標準 | Advanced | R&D |
|---|---|---|---|
| 最大銅厚(外層) | 3oz | 12oz | >12oz |
| 最大銅厚(内層) | 3oz | 12oz | >12oz |
| 最小線幅/間隔(内層) | 4/4 mil | 3/3 mil | 2/2 mil |
| 最小線幅/間隔(外層) | 4/4 mil | 3/3 mil | 2/2 mil |
| 機械穴 最小 | 0.2 mm | 0.15 mm | 0.15 mm |
| レーザー穴 最小 | 0.1 mm | 0.075 mm | 0.075 mm |
| 最大アスペクト比(PTH) | 10:1 | 10:1 | 10:1 |
| 層数 | 40 | 64 | 64 |
| 最大基板厚 | 4 mm | 6 mm | 6 mm |
| バックドリル径 | 0.50 mm | 0.35 mm | 0.25 mm |
最も多い誤読は次の点です。これは項目ごとの能力上限であり、列単位で発注できるパッケージではありません。 「Advanced は 12oz 可」と「Advanced は 3/3 mil 可」は同じ列にありますが、12oz の銅上で 3/3 mil が引けるという意味ではありません。3/3 mil は薄銅条件で成立する値、12oz は形状を緩めた条件で成立する値です。同一列の両極値を同時に取ることはできません。
判断の原則は単純です。同じ列の中で互いに矛盾する上限は、どちらか一方しか取れず、他方は成立する水準まで後退させる必要があります。 後退幅は、材料・層数・パターン密度に応じて技術審査が確定する内容であり、設計段階で計算式から導けるものではありません。条件付きの能力値はすべて「Advanced 相当、技術審査による確認が必要」として扱ってください。
銅が厚くなるとなぜ線幅を広げねばならないのか
エッチングは不要な銅を上から下へ溶かしていきますが、その間ずっと側壁も攻撃されています。銅が厚いほど深さ方向の処理時間が長くなり、側壁の横方向の後退量も増えるため、仕上がった導体は矩形ではなく上が狭い台形になります。導体上面の幅を確保するには、原図で線を太めに描く必要があります。これがエッチング補正です。
設計側が受け止めるべき点は二つあります。
公差は比率で与えられており、絶対値ではありません。 /tolerance/ の線幅公差は ±20%、銅間間隔も同じく ±20% です。比率公差である以上、線が細くなるほど使える絶対偏差は小さくなります。4 mil の線に対する ±20% は ±0.8 mil です。その線が厚銅層上にあれば、厚銅エッチング固有のばらつきだけで 0.8 mil を使い切ることがあり得ます。これは歩留りの問題ではなく幾何学の問題で、ばらつきが公差帯に収まりません。厚銅層上の線幅を広げるのは保守的な判断ではなく、公差帯が工程変動を収容できるようにするためです。
間隔と線幅は同時に後退します。 側壁が後退する分、隣接導体間の隙間は両側から圧縮されます。線幅だけ緩めて間隔を据え置けば、リスクをオープンからショートへ移し替えるだけです。厚銅層では線幅と間隔を一組として調整してください。
補正係数や、銅厚ごとの線幅換算表はここでは示しません。これらは材料・パターン密度・エッチングラインの状態で変動し、実際の積層構成に基づいて技術部門が確定します。流通している一般的な換算表は発注の根拠にはなりません。
銅厚が穴に及ぶ経路:厚み積算とアスペクト比 10:1
銅厚は基板厚を介して穴に届きます。すべての銅層は総厚に加算され、厚銅層は厚い銅パターン間の隙間を埋めるために樹脂含有率の高いプリプレグを必要とするため、その絶縁層も薄銅層より厚くなります。層数を変えずに数層だけ厚くしても、基板厚は上がります。
基板厚が上がればアスペクト比も動きます。/capabilities/ の最大アスペクト比は 10:1 で、標準・Advanced・R&D の三段階すべてで同じ値です。これは穴壁へ銅を均一にめっきできる物理的限界であり、等級によって緩みません。アスペクト比=基板厚÷最小ドリル径ですから、
- 基板が厚くなれば、開けられる最小穴径は大きくなります。
- 小径穴を維持したいなら基板厚を抑えます。厚くする層数を減らすか、厚銅を本当に必要な層に限定します。
- 機械穴の下限は 0.2 mm(標準)/ 0.15 mm(Advanced)、レーザー穴は 0.1 mm(標準)/ 0.075 mm(Advanced) ですが、これらはアスペクト比 10:1 が許す厚み範囲内でのみ使用可能です。
ここでの典型的な失敗は、Advanced の機械穴下限 0.15 mm で穴を描きながら、厚銅要求から基板厚を 4 mm 超へ押し上げることです。0.15 mm と 4 mm の組み合わせはアスペクト比が 10:1 を大きく超え、当初から成立していません。厚銅製品ページの基板厚は 6.0 mm まで、/capabilities/ の最大基板厚も標準 4 mm / Advanced 6 mm です。厚みのウィンドウは開いていますが、厚みを使い切ることは小径穴を諦めることを意味します。
同じ連鎖上にバックドリルもあります。径は 0.50 mm(標準)/ 0.35 mm(Advanced)/ 0.25 mm(R&D)です。基板厚が増えると深さ制御は厳しくなるため、厚銅とバックドリルの要求が同時にある場合は見積段階で併記してください。
ソルダーレジストと表面処理も銅厚に追随する
銅が厚くなれば銅パターンは基材面からより高く立ち上がり、レジストはその段差を越えなければなりません。/tolerance/ はソルダーレジストの合わせ精度を ±0.003"(≈0.076 mm)、深さ ±0.005" とし、開口はパッドより 0.003" 大きく(マスクスウェル)、パッド間隔が 0.010" 以内の場合は特殊処理が必要になり得ると示しています。
厚銅条件ではこれらは一本の連鎖として読みます。
- パッドより 0.003" 大きい開口は合わせ誤差に対する余裕であり、装飾ではありません。厚銅層の段差は高く、段差側面のレジスト膜厚は平面部より本質的に薄くなります。開口をパッドと同寸にすると、多くの場合レジストがパッド上に乗り上げるか、銅端部が露出します。
- パッド間隔 0.010" 以内で特殊処理という条件は、厚銅の狭間隔領域でより早く該当します。狭ピッチと厚銅が同一領域に共存する場合は、DFM の指摘を待たず見積段階でその領域を明示してください。
- 表面処理の選択肢も狭まります。
/surface-finish/と/capabilities/の比較表では、HASL と鉛フリー HASL はパッドが凸面(Dome)であるため狭ピッチ SMT および BGA/μBGA に不適とされ、ENIG・ENEPIG・ハードゴールド・化学銀は平面(Flat)です。厚銅基板に狭ピッチ部品が載る場合、凸面処理は既に厳しい共平面性をさらに悪化させるため、平面系処理を優先します。
インピーダンスもここで交差します。/capabilities/ のインピーダンス制御は ±10%(標準)/ ±5%(Advanced) です。インピーダンスは線幅・絶縁層厚・銅厚の三者で決まりますが、厚銅層では線幅を緩める必要があり、絶縁層厚も充填要求に応じて変動します。厚銅層をインピーダンス制御層にすることは、通常その基板で最も高価な選択になります。現実的な構成は、インピーダンス制御信号を薄い内層に置き、厚銅層は電流と放熱のみを担わせることです。
諦めるべき組み合わせ
以下は「難しい」のではなく、公開されているウィンドウ上で相互に排他です。設計段階で自ら外しておけば、DFM での差し戻し 1 往復を省けます。
- 12oz 銅 + 3/3 mil 線幅/間隔。 同一列の両極値は共存できません。厚銅では線幅と間隔の双方を緩める必要があります。
- 基板厚 4 mm 超 + 機械穴 0.15 mm。 等級に関係なくアスペクト比が 10:1 を超えます。
- 基板厚 6.0 mm 使い切り + 最小穴径。 厚みのウィンドウと穴径のウィンドウを同時に使い切ることはできません。
- 厚銅層 + ±5% インピーダンス制御。 線幅の緩和と充填由来の絶縁層変動により、その層で Advanced 等級は現実的ではありません。インピーダンス制御は薄い内層へ移します。
- 厚銅の狭間隔パッド + HASL。 高い銅段差の上に凸面パッドが重なります。狭ピッチや BGA では ENIG など平面処理を用います。
- 厚銅 + パッド間隔 0.010" 以内で未申告。 禁止ではありませんが、見積段階での申告が必須です。申告がなければ DFM で戻ります。
- 一般的な換算表から転記したエッチング補正。 補正量は材料・密度・エッチングライン状態で変動し、実際の積層構成に基づく技術部門の確認が必要です。
見積依頼前に明記すべき事項
以下を RFQ に含めれば、技術審査は 3 往復ではなく 1 回で結論を出せます。
- 層ごとの銅厚(内層・外層を分けて)。 ベース銅か仕上がり銅厚かを明記し、外層を仕上がり厚で要求する場合はその旨を明示します。
- どのネットに厚銅が必要か、その理由。 電流か放熱か、対象領域はどこか。厚銅を一部の層に限定できるかがこれで決まります。
- 最小線幅/間隔を領域別に。 厚銅領域と信号領域を分けて示し、基板全体に一つの最小値を適用しないでください。
- 最小穴径と目標基板厚を同時に提示。 どちらが必須要件かを推測させず、技術部門がアスペクト比を直接計算できるようにします。
- インピーダンス要求のある層、目標値と公差等級(±10% か ±5% か)。
- 表面処理と狭ピッチ部品リスト。
- 受入基準:IPC-A-600 / IPC-6012 の Class 2 か Class 3 か。
/quality/ページは IPC-A-600 Class 2/3 での受入を示しています。等級によりアニュラリング、めっき、外観判定基準がいずれも異なります。
参照先:工程ウィンドウは製造能力と厚銅 PCB、公差は製造公差、多層構成は多層 PCB、表面処理比較は表面処理、基材は材料ライブラリ、パラメータが揃ったらお見積りへ。
セルフチェック(ja)
- REVIEW_REQUIRED:本節は機械支援による作成です。公開前にネイティブ校正(専門用語・助詞・敬体の統一、表記ゆれ)を必須とします。数値は英語節と同一の出典に基づき、追加・改変はしていません。
- 中核の問いに回答済み:各銅厚段階が線幅/間隔・穴とアスペクト比・レジストと表面処理をどこまで動かすか、標準と Advanced の境界、排他となる 7 組。
- 数値の捏造なし:能力値・公差値はすべて
/capabilities/、/tolerance/、/products/heavy-copper-pcb/で検証可能。補正係数・電流容量アンペア値・銅厚→線幅換算表・歩留り・納期は記載していません。 - 内部リンク 7 本、locale は
/ja/...で正しく、ビルド出力に存在。/industries/*へのリンクなし。 - slot 1(混合銅厚スタックアップの層配置)との差異:本稿は「銅厚がどの設計規則を書き換えるか」に答え、層の配置案は扱いません。
- キーワードの過剰使用なし。主キーワードは title / H1 / 冒頭 / FAQ に自然な形で出現。
- FAQ 7 問はいずれも本文の結論と整合し、本文にない数値を導入していません。
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FAQ
1oz 銅の厚みはどれくらいですか。
1oz は 1 平方フィートあたり 1 オンスの銅という面密度を指し、約 35µm に換算されます。外層の仕上がり銅厚はベース銅箔+めっきの結果であることに注意してください。カバー断面図の「Cu 18µm + plating」が 35µm と寸法表示されているのはこの理由です。内層にはめっき工程がないため、銅箔厚が仕上がり厚になります。
Sunking の銅厚範囲は。
/capabilities/ の公開値は全体で 0.5oz から 12oz 超、内外層とも標準 3oz、Advanced 12oz、R&D 12oz 超の区分です。厚銅ラインの常用範囲は 3oz から 12oz 超、1〜16 層、基板厚 0.8〜6.0 mm です。
同じ列にあるのに 12oz と 3/3 mil を同時に選べないのはなぜですか。
あの表は項目ごとの能力上限を示すもので、列単位で発注できる構成ではありません。矛盾する上限はどちらか一方のみを取ります。12oz を取るなら線幅と間隔を緩め、3/3 mil を取るなら銅厚を下げます。後退幅は積層構成に基づき技術部門が確定します。
銅を厚くすると開けられる最小穴径に影響しますか。
影響します。経路は基板厚です。銅厚と、厚銅に必要な充填絶縁層の双方が厚みを押し上げる一方、最大アスペクト比は三等級すべてで 10:1 に固定されています。基板が厚くなれば最小穴径は大きくなります。小径穴を維持するには、厚くする層数を減らすか総厚を抑えます。
厚銅基板でインピーダンス制御はできますか。
インピーダンス要求を設定することは可能ですが、制御線を厚銅層に置くことは推奨しません。厚銅層では線幅を緩めねばならず、絶縁層厚も充填要求で変動するため、/capabilities/ の ±5%(Advanced)等級はその層では成立しにくいです。推奨構成は、インピーダンス制御を薄い内層に置き、厚銅層は電流と放熱に限定することです。
厚銅基板のソルダーレジストで注意すべき点は。
銅の段差が高く、側面のレジスト被覆は本質的に薄くなります。/tolerance/ の基準では合わせ精度 ±0.003"、開口はパッドより 0.003" 大きく、パッド間隔 0.010" 以内は特殊処理が必要になり得ます。厚銅の狭間隔領域はこの条件に早く該当するため、見積段階で明示してください。
自分の仕様に技術審査が必要か、どう判断すればよいですか。
二つのウィンドウの境界へ同時に近づく場合(銅厚が 12oz に近く細線も要求する、基板厚が 6 mm に近く小径穴も要求する等)は審査が必要です。条件付きの能力値は「Advanced 相当、技術審査による確認が必要」として扱い、設計段階で上限値のまま確定させないでください。

