狭ピッチ印刷で不具合が出ると、現場ではまず「はんだ粉を一段細かく」「マスクを一段薄く」となりがちです。どちらも狭ピッチのパッドは改善できますが、同じ基板の別のパッドを悪化させることがあります。3つのパラメータは同じ制約に従っているからです。基板上で最も小さい開口です。
面積比の計算や小開口で抜けなくなる理由は、開口面積比とはんだ抜け と 小開口印刷の限界 で扱っています。本記事は1点だけに答えます。3つをどの順で決めるか、1つ変えると問題がどこへ移るか。
各パラメータが決めるもの
| パラメータ | 直接決めるもの | 最小開口への制約 | 大パッドへの影響 |
|---|---|---|---|
| マスク厚み | 印刷高さ、面積比の分母 | 厚いほど面積比が下がる | 薄いほどはんだ量が減る |
| はんだ粉タイプ | 開口幅に並ぶ粒子数 | 粗いほど充填がばらつく | ほぼなし |
| 開口加工 | 壁面粗さ、テーパ、抜け | 壁面が悪いと同じ面積比でも抜けにくい | 小さい |
要点は最後の列です。マスク厚みは基板全体に効き、粉タイプと開口加工は主に小開口に効きます。 厚みを変えるたびに大パッドを確認し直す必要があります。
決める順序:最小開口から始める
手順1:最小ピッチではなく最小開口を押さえる。
印刷の難しさは開口サイズで決まり、開口の上限はパッドとソルダーレジスト開口で決まります。同じ0.4 mmピッチでもパッドが違えば別の問題です。ペースト層で最も面積の小さい開口クラスを探し、部品、パッド寸法、レジスト定義を記録します。
手順2:面積比からマスク厚みの上限を決める。
SKPCBのメタルマスクサービスページに記載の厚みは 0.08 / 0.10 / 0.12 / 0.15 / 0.20 mm の5段階で、連続的には選べません。最小開口から逆算し、面積比が経験値0.66以上を保てる最も厚い段が上限です。0.66は経験的な下限であり、合否基準ではありません。
手順3:開口幅から粉タイプを決める。
業界でよく使われる目安は、最小開口の幅方向に最大粒子が約5個並ぶことです。並ばないと同寸開口間のはんだ量のばらつきが大きくなり、SPIではまず平均値の低下ではなく標準偏差の増大として現れます。粒径範囲は使用するはんだペーストのデータシートに従います。
手順4:大パッドに戻って確認する。
狭ピッチでマスクが薄くなると、QFNの放熱パッド、コネクタ、パワー部品のパッドのはんだ量も下がります。ステップマスクなどの対策が要るかはここで決まります。
手順5:最後に開口加工を検討する。
面積比が限界に近いほど壁面状態の影響は大きくなります。電解研磨、ナノコーティング、電鋳は手順1〜4を決めた後に余裕を足す手段で、代わりにはなりません。
1つ変えると問題はどこへ移るか
| 変更 | 狭ピッチパッド | 問題の移り先 |
|---|---|---|
| マスクを一段薄く | 面積比が上がり抜けが改善 | 大パッドのはんだ不足、放熱パッドのボイドリスク |
| 粉を細かく | 充填ばらつきが減る | 酸化に敏感、常温戻しと開封後時間の管理が厳しく、印刷中の粘度変化が速い |
| 開口を広げる | 面積比が上がる | 隣接間隔が狭まりブリッジ増加。パッドとレジスト開口で制限 |
| ブリッジ対策で開口を縮小 | ブリッジ減少 | 面積比低下、はんだ不足、オープン |
| 電解研磨・コーティング | 同じ面積比で抜けが安定 | コストと納期が増える。面積比は変わらない |
パターンは、厚みは影響範囲が最も広く、粉は運用管理のコスト、開口は隣接間隔のコストです。1回に1つだけ変え、SPIを見直します。
混載基板:狭ピッチと大パッドが同じマスク上にある場合
- 大パッドの開口を広げる:レジスト開口が許す範囲で。最も安価だが余裕は小さい。
- ステップマスク:大パッド部を局所的に厚く、または狭ピッチ部を局所的に薄くする。段差の縁にはスキージの移行距離が必要です。ステップメタルマスクの多段開口設計 を参照。
- 放熱パッドの分割開口:大開口を格子状に分け、はんだ量とボイドを抑え、スキージによるかき取りを防ぐ。
いずれも、マスク厚みが最小開口から決まっていることが前提です。順序を逆にすると、2種類のパッドの間で調整を往復することになります。
開口加工の合わせ方
レーザー加工、電解研磨、ナノコーティング、電鋳はいずれも壁面の問題を扱います。比較は レーザー加工と電鋳メタルマスク と 開口壁面の研磨とナノコーティング にあります。
判断は1つです。最小開口の面積比が0.66に近いほど壁面加工の価値は高く、面積比に余裕のある基板では効果が小さい。 先に面積比を計算してから、壁面に費用をかけるか決めます。
初品承認で固定する組み合わせ
- 最小開口クラス:部品、パッド寸法、レジスト定義、開口寸法
- マスク厚みの段、ステップ部の位置と厚み
- はんだペースト品番と粉タイプ
- 開口加工:加工方法、研磨の有無、コーティングの有無
- SPI判定:基板全体で1つの数値ではなく、開口クラスごとの平均とばらつき
- 既知の移行リスク:はんだ量下限付近にある大パッド
どれか1つが欠けると、ライン変更やペーストロット変更の後に、どのパラメータが動いたか判断できません。
メタルマスクメーカーと実装工場に渡す情報
- ペースト層ガーバー(RS-274X)とレジスト層・外形層、またはODB++。サービスページ記載の入力形式です
- 最小ピッチ部品とそのパッド定義
- はんだペースト品番と粉タイプ。未定なら「工場推奨を希望」と明記
- ステップマスク、電解研磨、ナノコーティングの可否
- 印刷機の枠サイズ
SKPCBで確認済みの実装最小ピッチは、BGA 0.2 mm、QFN/QFP 0.3 mmです。厚み、枠サイズ、仕様は SMTメタルマスク に掲載しており、データはそのまま 見積依頼 へ送れます。
まとめ
3つのパラメータは決まった順序で決めます。最小開口 → マスク厚み上限 → 粉タイプ → 大パッドの再確認 → 開口加工。マスク厚みは基板全体に効くため、それより先にほかを動かすと問題が移るだけで解決しません。初品承認では6項目をまとめて固定します。
セルフチェック
- 既存記事との重複:面積比、小開口の抜け、ステップマスク、壁面処理はそれぞれ既存記事あり。本記事は決める順序と問題の移行のみを扱い、それらへ内部リンク。
- 同日:slot 1(両面板から4層へ)、slot 2(メタルベース構造)とは中心課題が異なり、カバー画像も別。
- 事実:数値はサービスページとPCBA-PITCHのみ。粒径、価格、納期、歩留まり、事例なし。
- リンク:
/ja/内部リンク7件、すべてout/ja/に存在。industries ページなし。 - FAQは本文と一致。
- REVIEW_REQUIRED:ネイティブ校閲を推奨。
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FAQ
Q:狭ピッチではんだ不足。先に粉を細かくするか、マスクを薄くするか?
A:まず最小開口の面積比を計算します。経験値0.66を下回るなら原因は厚みか開口です。面積比は足りているのに同寸開口がばらつくなら、細かい粉を検討します。
Q:マスクを一段薄くする代償は?
A:厚みは基板全体に効きます。大パッド、放熱パッド、コネクタのはんだ量も下がり、開口拡大やステップマスクで補う必要があります。
Q:粉は細かいほど良いのか?
A:いいえ。細かい粉は酸化しやすく、常温戻し、開封後時間、印刷中の管理が難しくなります。ペーストのデータシートに沿って、必要十分なものを選びます。
Q:電解研磨やナノコーティングで薄いマスクの代わりになるか?
A:なりません。壁面の抜けは改善しますが、面積比は変わりません。経験値を大きく下回る場合は補えません。
Q:初品承認で何を固定するか?
A:最小開口クラス、厚みとステップ部、ペースト品番と粉タイプ、開口加工、開口クラスごとのSPI判定、大パッドの既知リスクです。

