Rogers を採用すると決めたあと、積層構成に RO4350B や RO3003 といった型番を一つ書くだけで出図されることがよくあります。しかしこの二つは別の材料ファミリーに属し、工場内で通る工程も異なります。ファミリーが変われば、穴壁の処理、多層の接着材、外形の加工方法も変わります。分岐点を知らなければ、積層構成や図面の注記が十分かどうか判断できません。
材料選定そのもの(FR-4 か Rogers か)は FR-4 と Rogers の基材選定 を参照してください。本記事では Rogers 内の二つのファミリーの製造上の違いだけを扱います。
二つのファミリーの材料構成
- RO4000 シリーズ(例:RO4003C、RO4350B、RO4835):ガラスクロス補強のセラミック充填炭化水素樹脂系。構造は一般的な熱硬化性積層板に近く、剛性があります。
- RO3000 シリーズ(例:RO3003、RO3006、RO3010):セラミック充填 PTFE 複合材料。母材が PTFE のため柔らかく、表面は化学的に不活性です。
工程の違いはほぼすべて、熱硬化性樹脂系か PTFE 系かという点から生じます。
分岐 1:穴明け
どちらもセラミックフィラーを含み、標準 FR-4 よりドリルの摩耗が大きいため、材料に合わせて工具寿命と穴明け条件を設定します。
違いは穴壁品質です。RO4000 は硬く、主な課題は工具摩耗と穴壁粗さです。RO3000 は柔らかく、PTFE のスミア、バリ、穴口の変形が出やすいため、鋭利なドリルと適切なエントリー材・バックアップ材が必要です。小径・厚板ほど差が大きくなります。
分岐 2:めっき前の穴壁処理
二つのファミリーで最も差が大きい工程です。
RO4000 の穴壁は通常の FR-4 と同じスルーホールめっきラインで処理できます。Rogers の加工ガイドでは PTFE のような専用の活性化処理は求められていません。
RO3000 の PTFE 穴壁は化学的に不活性で、無電解銅が直接密着しません。めっき前にナトリウムナフタレン処理またはプラズマ処理による活性化が必要です。これを省くと穴銅の密着が不足し、熱ストレスで穴壁剥離が起こりやすくなります。
プラズマデスミアと活性化の詳細は 高周波基板の穴明けとプラズマデスミア を参照してください。
分岐 3:多層プレスの接着材
RO4000 のコアは Rogers の RO4400 シリーズプリプレグで積層できるほか、FR-4 プリプレグと組み合わせて高周波層と FR-4 層のハイブリッド基板にもできます。プレス工程は通常の多層板に近いものです。
RO3000 は PTFE 系で、一般的な FR-4 プリプレグでは十分に接着しません。多層構成には PTFE に適合する接着材(例:Rogers 2929 ボンドプライ。具体的な選定は Rogers の多層加工ガイドに従う)が必要で、プレス条件もそれに合わせて変わります。接着層にも誘電率と損失があり、インピーダンス計算に入ります。
PTFE の接着強度については 高周波基板のプレスと PTFE 接着、異種材料積層の制約は ハイブリッド積層構成 を参照してください。
分岐 4:ソルダーレジスト・表面処理前の銅面前処理
RO4000 の銅面前処理は通常の機械研磨や化学ソフトエッチングで対応できます。
RO3000 は柔らかく、強い機械研磨でパネルが伸びたり歪んだりして、寸法安定性と位置合わせに影響します。そのため化学的な前処理を優先するか、研磨圧を下げます。露出した PTFE 上にソルダーレジストを塗布する場合は、密着性を別途確認する必要があります。
分岐 5:外形加工
RO4000 は FR-4 と同様にルーター加工や金型抜きができ、端面品質も近いレベルです。
RO3000 はルーター加工でバリや糸状の残りが出やすく、鋭利な刃物と送り速度の管理が必要です。鋭角、細いスリット、細長い突起は変形しやすいため、外形公差とスリット幅はこの点を考慮して決めます。
分岐点のまとめ
| 工程 | RO4000(セラミック充填炭化水素) | RO3000(セラミック充填 PTFE) |
|---|---|---|
| 穴明け | フィラーで工具摩耗、材料別に工具寿命設定 | 同様の摩耗に加えスミア・バリのリスク |
| 穴壁処理 | 通常のめっきラインで対応 | ナトリウムナフタレンまたはプラズマ活性化が必須 |
| 多層接着 | RO4400 プリプレグまたは FR-4 プリプレグ | PTFE 適合の接着材 |
| 銅面前処理 | 通常の研磨またはソフトエッチ | 伸び防止のため化学処理を優先 |
| 外形加工 | FR-4 に近い | バリが出やすく、角・スリットに余裕が必要 |
設計側で調整すべき入力情報
- 積層構成に型番と厚みを正確に記載し、「Rogers」だけにしない。ファミリーが工程ルートを、型番が誘電特性を決めます。
- 多層板では接着材を明記。特定のボンドプライやプリプレグが必要なら積層構成に記載し、メーカー選定でよい場合は、実際の接着材でインピーダンスを計算・確認する旨を注記します。
- ハイブリッド構成では層ごとの材料を明記。どの層が Rogers、どの層が FR-4 かを層順に記載します。
- 代替可否を指定。同一ファミリー内の代替とファミリーをまたぐ代替では工程への影響がまったく異なります。高周波基板材料の代替承認 を参照してください。
- RO3000 の小径穴・厚板・細い外形形状は早期レビューに回す。穴明けと外形加工の差が最も出やすい箇所です。
- 表面処理とソルダーレジスト範囲を図面に記載。露出 PTFE 部にレジストをかけるかはメーカーと合意します。
高周波基板の工程管理全体は 高周波基板の製造工程管理、製品情報は 高周波 PCB、材料範囲は 材料 を参照してください。
まとめ
RO4000 と RO3000 はどちらも Rogers ですが、一方は熱硬化性の炭化水素系、もう一方は PTFE 系です。工程は穴壁活性化、多層接着、銅面前処理、外形加工の四か所で分かれ、最大の差は穴壁処理にあります。型番、接着材、ハイブリッドの層順、代替ルールを図面に書いておけば、メーカーは見積段階で工程ルートを判断できます。具体的な積層構成のレビューは 見積依頼 からどうぞ。
自己チェック
- 既存記事との重複:
fr4-vs-rogers-substrate-selection(材料選定)、high-frequency-pcb-drilling-hole-metallization-plasma-desmear(プラズマデスミア)、high-frequency-pcb-manufacturing-lamination-bonding-ptfe(PTFE 接着強度)、hybrid-pcb-mixed-material-stackup-lamination(ハイブリッド積層)。本記事は Rogers 二ファミリーの工程分岐のみを扱い、上記は内部リンクとして参照。 - 同日クロスサイト重複:PCB168 の当日 brief は未作成。本記事は材料・工程比較で、購買視点ではない。
- キーワード:「ロジャース基板」「RO4000」「RO3000」「加工」が title、description、H1、本文に自然に出現。詰め込みなし。
- 事実範囲:Rogers 公開資料の定性的記述のみ。Dk/Df 数値なし。SKPCB の在庫型番、納期、歩留まり、数値能力の記載なし。
- 内部リンク:
/ja/リンク 9 件、すべてout/ja/に存在を確認。industries リンクなし。 - FAQ と本文の整合:6 問すべて本文の記述に対応。
---
FAQ
Q:RO4350B と RO3003 はどちらも Rogers ですが、製造工程は同じですか?
A:同じではありません。RO4350B は RO4000 炭化水素系で通常のめっき工程に対応できますが、RO3003 は RO3000 PTFE 系で、先に穴壁の活性化が必要です。
Q:なぜ PTFE の穴壁は専用の活性化が必要ですか?
A:PTFE は化学的に不活性で、無電解銅が直接密着しないためです。ナトリウムナフタレンやプラズマ処理で表面状態を変え、めっきの密着を確保します。
Q:RO3000 の多層板を一般的な FR-4 プリプレグで積層できますか?
A:FR-4 プリプレグは PTFE への接着が限定的です。通常は PTFE 適合の接着材を使い、その誘電特性をインピーダンス計算に含めます。
Q:RO4000 は FR-4 と組み合わせられますか?
A:可能です。RO4000 は熱硬化性で、FR-4 とのハイブリッド構成によく使われます。層順と材料は積層構成に一層ずつ記載してください。
Q:図面に「Rogers」とだけ書けば十分ですか?
A:不十分です。ファミリーが工程ルートを、型番と厚みが誘電特性を決めます。型番、厚み、銅箔、代替ルールを記載してください。
Q:RO3000 の外形加工で注意すべき点は?
A:材料が柔らかくバリが出やすいため、鋭角、細いスリット、細長い突起が変形しやすくなります。外形公差は早めにメーカーと確認してください。

