先に結論です。サーマルビアの処理は「できるだけ満たす」話ではなく、リスクの配分です。開放ビアはリスクを実装側に残し、リフローで溶融はんだが穴に引き込まれます。樹脂埋め+蓋めっきはリスクを製造側に移し、穴口を平らに研磨してめっきできるかが問題になります。導電ペースト充填は充填材料と穴口加工のばらつきにリスクが集まります。三つとも使える基板になりますが、壊れ方がまったく違い、図面はどのルートを選んだのかを述べる必要があります。
1. 一つの構造に、両立しない二つの要求
パワーデバイスの下にビア群を描く理由は一つだけです。ダイ直下の熱を裏面銅、金属ベース、あるいは外部ヒートシンクへ落とすためです。これは垂直方向の熱経路であり、めっきの連続した穴が多いほどよく流れます。
問題はその場所です。そこは空いた銅面ではなく、デバイスの放熱パッド —— リフローではんだ接合を成立させなければならない面です。結果として同じ穴が二つの要求を負います。
- 熱経路としては、底まで貫通した銅の筒であってほしい。
- はんだ接合面としては、平らで連続した、漏れない面であってほしい。
この二つは構造上矛盾します。貫通した穴は漏れ、平らな面とは穴口が何かで閉じられている状態です。サーマルビアの工法選択とは、受け入れられる不具合の形を選ぶことです。
よくある誤解は、これを通常の電気ビアを密にしたものと見なすことです。電気ビアは導通だけが要件で、穴にはんだが入ったか、穴口が平らかは問いません。放熱パッド下のビアは違い、はんだ接合部の形状とボイドを直接左右します。接合部が痩せれば、熱経路の最初の区間(ダイからパッド)がまず切れます。その先がどれほど良くても意味がありません。
2. 三つのルートと、リスクを引き受ける工程
| ルート | ビアの最終状態 | リスクの移動先 | 典型的な不具合 |
|---|---|---|---|
| 開放(充填なし) | めっき穴、中空、両端開口 | 実装(リフロー) | はんだが穴壁を伝って流れ、パッド下のはんだ不足、ボイド拡大、裏面にはんだの盛り上がり |
| 樹脂埋め+蓋めっき | 内部は樹脂、穴口は銅で閉じてパッドと一体 | 製造(穴埋め、研磨、二次めっき) | 穴口の凹みまたは突出が許容を超える、樹脂と穴壁の間の空隙、蓋銅と穴壁銅の境界の不連続 |
| 導電ペースト充填 | 内部は導電充填材、穴口はパッドと面一に仕上げ | 材料と穴口加工のばらつき | 充填不足、ビア間の充填高さ不均一、充填材と穴壁の界面の不連続 |
この表は優劣の順位ではなく、どちら側で問題が出てほしいかという問いです。
開放ビアは工程上もっとも安く、追加工程がありません。代償は、管理できない変数を実装へ渡すことです。めっき穴は毛細管だからです。樹脂埋めには独立した受入基準の体系がありますが、その代わりに穴埋め、硬化、研磨、再めっきという工程が増え、それぞれに工程窓があります。導電ペースト充填は両立するように見えて、結果を材料ロットと穴口加工の一致度に預けます。数個の充填高さが違えば、接合面はもう平面ではありません。
常に混同される点を一つ。樹脂埋めの樹脂は熱を運びません。 このルートの伝熱は依然として穴壁のめっき銅と穴口の蓋銅が担います。樹脂は穴を満たして穴口を平らにめっきできるようにするためのものです。「樹脂を入れたから放熱が良くなる」は設計根拠として成り立ちません。
3. はんだが逃げる理由:開放ビアの実際の代償
放熱パッド下に開放ビアを置くと、リフローで決まった現象が起きます。はんだペーストが溶けて流動性を持ち、スルーホールは両端が開いた毛細管なので、溶融はんだが穴壁を伝って引き込まれ、裏面開口から出ることもあります。
影響は連鎖します。
- パッド下のはんだ量が減る。 デバイスとパッドの間の層が薄くなるか大きなボイドができ、ダイからパッドへの最初の一跳びがむしろ悪化します。
- デバイスが傾くことがある。 引き込みは群全体で均一になりません。多く取られた側へ、溶融中にデバイスが沈みます。
- 裏面にはんだの盛り上がりが出る。 裏面も実装面である場合やヒートシンクに密着させる場合、この盛り上がりが接触を壊します。
- 結果が安定しない。 引き込み量はペースト量、炉のプロファイル、穴の毛細条件で決まり、ロット間で変動します。同じ設計が二つのラインで違う結果になり得ます。
したがって「サーマルビアは埋めなくても使える」が成立する条件は一つだけです。実装側がビアが開放であることを知り、ペースト量、メタルマスク開口、炉プロファイルを調整していること。 図面が何も言わず実装が通常処理をすれば、上の四点は確率的に起こります。これは工程間の情報伝達の問題で、能力の問題ではありません。
実務で広く使われる中間策もあります。充填はせず、裏面の穴口をソルダーレジストで覆って毛細管の一端を塞ぐ方法です。裏面への流出は大きく減りますが、穴は中空のまま、裏面はヒートシンク密着に使えなくなり、レジストが穴口を完全に塞げるかは穴径に直接依存します。これは前提にせず製造側と確認してください。
4. 埋めると決めたら、問いは「穴口は平らか」になる
樹脂埋めと蓋めっきの目的は明確です。穴壁の銅を熱経路として残したまま、放熱パッドを連続した面に戻すことです。そのために製造側は順に、穴を空隙なく樹脂で満たし、硬化させ、表面と面一に研磨し、さらにめっきして穴口を銅で閉じ、パッドと一体にします。
設計側が理解しておくべきは、このルートの壊れ方です。
- 穴口の凹みまたは突出。 研磨とめっきの後、穴口がパッドと完全に同一面になることはなく、わずかな凹凸が必ず残ります。許容内なら問題になりませんが、超えると局所的なボイドや支点になります。これがこのルートの中心的な管理項目です。
- 樹脂と穴壁の間の空隙。 充填不足で残った隙間は、熱サイクルで亀裂の起点になり、めっきや洗浄で薬液を抱き込みます。
- 蓋銅と穴壁銅の境界の不連続。 二回のめっきの間の界面であり、熱経路全体の中で最も見落とされやすい区間です。
これらは樹脂埋め自体の受入範囲に属し、判定基準と検査手段はそちらに書いてあるので繰り返しません。設計側の仕事は二つだけです。この群が穴埋め+蓋めっきのルートであることを図面で指定し、穴口の平坦度が管理項目であると述べること。製造側の解釈に委ねないことです。
関連して、穴壁めっきの連続性はこのルート全体の前提です。穴埋めと蓋めっきは穴壁めっきの後の工程なので、元々めっきが良くない穴を修復することはできません。アスペクト条件が厳しいほど穴壁めっきを均一にするのは難しく、これはスルーホールおよびマイクロビアめっき自体の制約です。
5. サーマルビアが正解でなくなるとき
サーマルビアは通常の FR-4 多層板という前提のもとで垂直伝熱を解く手段です。その上限は構造が決めます。熱は絶縁層を一層ずつ、銅の筒のネットワークで越えていく必要があり、絶縁材自体は熱を運びません。デバイスの発熱密度がさらに上がると、ビアを増やしても効果は鈍ります。ボトルネックがビアから離れているからです。
そこで考えるのは基材構造の変更で、穴の追加ではありません。
- 金属ベース(アルミ/銅):絶縁層を極端に薄くし、熱を金属ベースへ直接入れます。このルートはビア群に依存せず、熱経路の構成が異なります —— 金属ベース基板の熱抵抗チェーンは別の変数群であり、アルミベースと銅ベースには加工上の境界がそれぞれあります。なお金属ベース構造では一般に貫通穴をベースに自由に通せないため、多層板とは設計制約が大きく異なります。
- セラミック基板:基材そのものが熱を運ぶので、絶縁層を迂回する銅の筒が不要です。
/ja/products/ceramic-pcb/ との意図の違いをここで明記します。 この二つの問題は検索上よく混ざるためです。本稿が答えるのは「すでに FR-4 多層板を使っていて、このパッド下のビアをどう処理するか」、つまり既存構造内での工法選択です。セラミック基板のページが答えるのは「基材を替えるべきか」、つまり構造選定です。前者の答えは三つの処理ルート、後者の答えは材料体系の比較です。ボトルネックが「穴口が平らか」から「絶縁材そのものが熱を止めている」に移っているなら、見るべきは後者で、本稿の先に答えはありません。同様に金属ベース製品ページと樹脂埋めビア製品ページが、この二つの出口に対応します。
6. 図面に明記すべき項目
サーマルビアの多くの問題は製造の限界ではなく、要求が書かれていないことです。次のどれかが欠けると、製造は自社の既定処理しかできず、既定処理は工場ごとに違います。
- この群の処理ルート。 開放/裏面レジスト被覆/樹脂埋め+蓋めっき/導電ペースト充填。穴を並べて描くだけにせず、文字で指定します。
- 穴口状態の要求。 埋めるなら、穴口をパッドと面一にし管理項目とすることを明記。開放なら、貫通を許容することと実装側への注意喚起を明記します。
- どのビアがサーマルビアか。 同一領域の通常の電気ビアと区別できる必要があります。区別しなければ同じ規則で処理されます。
- 裏面の用途。 ヒートシンク密着面か実装面かによって、突出やレジスト被覆が許容できるかが決まります。
- 表面処理。 放熱パッドの表面処理ははんだ付け挙動に関係します。未指定にしないでください。
- 両立しない要求を同時に出さない。 最大の熱経路のために完全貫通を求めつつ、パッドは穴のない連続平面であることを求める —— これは同時には満たせません。どちらを諦めるかを設計側が決める必要があります。
この六点を図面または工程指示に入れれば、残りは製造と品質検証の担当範囲です。実際に作れる構造の範囲は製造能力、基材の選択は材料を参照してください。
FAQ
Q1:放熱パッド下のビアは必ず埋める必要がありますか。
いいえ。開放ビアでも使えますが、実装側がビアが開放であることを知り、ペースト量、メタルマスク開口、炉プロファイルを調整していることが前提です。図面が何も述べず実装が通常処理をすると、はんだが穴壁を伝って流れ、パッド下のはんだ不足、デバイスの傾き、裏面のはんだ盛り上がりが起きます。
Q2:樹脂埋めは開放ビアより放熱が良いのですか。
いいえ。穴埋め+蓋めっきのルートでも伝熱は穴壁のめっき銅と蓋銅が担います。樹脂に熱的な役割はなく、穴を満たして穴口を平らにめっきできるようにするためのものです。このルートを選ぶ理由は平らな接合面の確保で、放熱性能の向上ではありません。
Q3:三つのルートはどう選べばよいですか。
受け入れられる不具合の形で選びます。開放ビアはリスクを実装側に残し、樹脂埋め+蓋めっきは製造側の穴埋めと二次めっきに移し、導電ペースト充填は材料挙動と穴口の一致度に集めます。三つとも使える基板になり得ますが、壊れ方が違います。
Q4:裏面をレジストで覆うのは穴埋めに当たりますか。
当たりません。毛細管の一端を塞ぐだけで、穴は中空のままです。裏面への流出は減りますが、その面はヒートシンク密着に使えなくなります。レジストが穴口を完全に塞げるかは穴径に依存し、前提にせず製造側と確認する必要があります。
Q5:サーマルビアは多いほど良いのですか。
いいえ。FR-4 多層板では熱が絶縁材を銅の筒のネットワークで越える必要があり、ある点を超えると追加の効果が鈍ります。そのときボトルネックはもうビアではありません。さらに改善するには構造を替えます。金属ベースは絶縁層を薄くして熱を直接ベースへ入れ、セラミックは基材自体を熱伝導体にします。
Q6:電気ビアとサーマルビアを同じ規則で扱えますか。
扱えません。図面で区別が必要です。電気ビアは導通だけが要件で、穴内のはんだや穴口の平坦度は機能に影響しません。放熱パッド下のビアは接合部形状とボイドを直接左右します。区別しなければ両方が同じ既定処理を受け、その既定処理は通常、電気ビア向けです。

