スルーホール壁の銅めっきはどれだけの厚さか。各内層はめっき銅と確実につながっているか。積層後の絶縁層にボイドはないか。これらは電気検査や外観検査では答えられません。穴を縦に切断し、研磨・バフ研磨して金属顕微鏡で観察するしかありません。これが断面観察(マイクロセクション、クロスセクション解析)です。
限界もはっきりしています。断面観察は破壊検査であり、一つの試料が示すのは切断した一つの面だけです。断面が合格であれば、その穴がその面で合格だったことを示します。結果を読む前に、どこを切ったのか、何が含まれているのかを確認する必要があります。
断面観察で判定できること・できないこと
| 項目 | 判定できること | 判定できないこと |
|---|---|---|
| スルーホール銅 | 穴壁めっき厚(最小値と平均値)、めっきボイド、ノジュール、めっき折れ | 基板上すべての穴の導通 |
| 穴と内層の接続 | 内層接続分離(ICD)、スミア残り、エッチバック/ネガティブエッチバック | 切断していない穴 |
| 表面銅 | ラップめっきの連続性、表面銅の総厚 | 回路の断線・短絡 |
| 積層 | 積層ボイド、層間剥離、レジンリセッション(熱ストレス後)、絶縁層厚 | インピーダンス値そのもの(TDRが必要) |
| 位置合わせ | 内層アニュラリング、層間ずれ | 外形・穴位置公差 |
| ブラインド/マイクロビア | マイクロビア底部とターゲットパッドの接合、充填部のくぼみ | ロット内の他の位置のマイクロビア |
ドリル後の穴壁品質(粗さ、ネイルヘッド)も断面で確認できます。ドリル工程の検査は PCBドリル穴の品質検査 を参照してください。
断面試料の作り方
試料作製は IPC-TM-650 2.1.1 に従い、おおむね次の5段階です。
- 採取:クーポンまたは基板から対象の穴を含む小片を切り出します。切断時の熱や応力が観察部に及ばないよう余裕を残します。
- 樹脂埋め:試料を樹脂で包埋します。通常は真空下で穴の中まで樹脂を充填し、研磨時に穴壁銅が引きずられないようにします。
- 研磨:粗い番手から細かい番手へ順に研磨し、穴の中心線まで到達させます。
- バフ研磨:研磨傷を除去します。傷が残るとクラックと誤読されるおそれがあります。
- マイクロエッチング:必要に応じて軽くエッチングし、界面と結晶組織を出して、無電解銅・電解銅・内層銅箔を区別できるようにします。
中心線まで研磨されていることが測定値の前提です。 中心を外すと穴壁を斜めに切ることになり、銅は実際より厚く、穴径は小さく見えます。報告書を読むときは最初にここを確認します。
断面報告書で見るべき項目
報告書や写真は次の順で確認します。
- スルーホール銅厚:平均値だけでなく最小値が記載されているか。穴の中央と穴肩では厚さが異なり、高アスペクト比の穴では中央が最も薄くなりがちです。高多層PCBのドリル、アスペクト比とつきまわり を参照してください。
- めっきボイド:数、位置、めっき層を貫通しているか。くさび形ボイドは穴壁銅と内層銅の境界に出やすい傾向があります。
- 内層接続:各内層パッドと穴壁銅の間に分離線がないか。ICD は常温では導通することがあり、電気検査では見つからず、加熱時に開放になります。
- ラップ銅:穴肩で表面銅が穴壁へ連続して回り込んでいるか。
- 絶縁層と積層:重要な絶縁層厚を測定し、ボイドや層間剥離がないか確認します。
- 切断面の位置:両側の穴壁が対称で、穴径がドリル径に近ければ中心線に到達しています。
合否は、指定クラス(Class 2 または Class 3)の IPC-6012 の条項で判定し、外観の参照には IPC-A-600 を用います。クラスによって、最小スルーホール銅厚、ボイドの数と位置、エッチバックの要求が異なります。注文書には「断面観察要」だけでなくクラスを明記します。
クーポン採取と製品基板採取
| 試料 | 利点 | 限界 |
|---|---|---|
| テストクーポン(パネル端に付加) | 出荷基板を壊さない;製品と同時に積層・穴あけ・めっきされる;穴径や層構成を設計できる | パネル端にあり、基板中央とめっき分布が異なる場合がある;クーポンに設計した穴しか代表しない |
| 製品基板 | 実製品の穴を直接見られる | 出荷基板を1枚壊す;選んだ位置しか見られない |
クーポン構造は IPC-2221 付録のテストパターンを参考にできます。設計入力に入れておくべき点は二つです。クーポンには基板内の最小穴径と最大アスペクト比の穴を含めること、そしてブラインドビア、ベリードビア、バックドリルがある場合は同じ構造も含めることです。そうでなければ、クーポンが合格してもそれらの構造については何も言えません。
製品基板の断面は、通常、初品承認、故障解析、BGA下のビアインパッドのようにクーポンで代表できない箇所に用います。
熱ストレス前後で見るもの
めっき直後の断面では見えない欠陥があります。IPC-TM-650 2.6.8 はめっきスルーホールの熱ストレス試験を定めています。試料をベーク後、溶融はんだにフロートさせてから断面を作ります。前後の断面を比べると、次のことが分かります。
- Z軸膨張によってスルーホール銅にクラックが入るか(特に穴中央と穴肩)
- 内層接続が分離するか
- 絶縁層に層間剥離、ふくれ、レジンリセッションが出るか
レジンリセッションは熱ストレス後に穴壁と絶縁層の間に現れるもので、本当の層間剥離と区別して判定します。基材のZ軸膨張が穴壁銅にかける負荷については 高Tg FR-4:Tg・Td・Z軸CTE を参照してください。
注文書で断面観察を求めるべき場合
次の場合は、注文書または図面に断面観察の要求を明記することを勧めます。
- IPC-6012 Class 3 を適用する、または長期信頼性の要求が高い製品
- 高アスペクト比の貫通穴、板厚が大きい、または高多層の基板
- ブラインド、ベリード、スタックビア、バックドリルを含む HDI 構造
- 厚銅基板
- 新しいサプライヤーでの初品、または基材・工程変更後の初ロット
めっき工程が自ら断面を追加する条件は PCBめっき工程の品質検査と出荷判定 を参照してください。
注文書への書き方
「断面観察要」を受入条件に書き換えるには、少なくとも次を含めます。
- 規格とクラス:例「IPC-6012 Class 3 にて受入」。
- 試料の種類:クーポン、製品基板、または両方。クーポンに含める穴の種類。
- 数量と位置:ロットまたはパネルごとの数、基板中央と端を含むか。
- 熱ストレス:IPC-TM-650 2.6.8 の熱ストレス後に断面を作るか。
- 報告内容:最小スルーホール銅厚、ボイド、内層接続、絶縁層厚の測定値と写真。
- 試料の保管:断面試料を製品に同梱するか、保管するか。
SKPCBの対応
SKPCB の検査体系には断面観察と銅厚測定が含まれます。同一ロットのテストクーポンで線幅、位置合わせ、断面、熱ストレスを確認し、特殊構造や異常ロットには断面を追加します。具体的な検査項目と抜き取り水準は注文と製品クラスごとに決め、受入は IPC-6012 Class II または Class III で行えます。詳しくは 品質管理 と 多層PCB を参照し、積層構成に合わせた断面計画は 見積 からご相談ください。
まとめ
断面観察は、スルーホール銅厚、内層接続、積層内部を直接見られる唯一の方法ですが、切断した面しか代表しません。規格クラス、試料の種類、熱ストレス、報告内容を注文書に書くことで、断面の結果を受入判定に使えるようになります。
セルフチェック
- 既存記事との重複:めっき出荷判定の記事は断面を追加する条件のみ、品質検査方法の記事は断面を短く紹介するのみ。本記事は読み方、採取、熱ストレス、注文書の書き方を扱い、他記事へリンク。
- 同日の PCB168:ブリーフ未作成。本記事は品質検証の技術記事で、RFQ チェックリストではない。
- キーワード:「断面観察」「マイクロセクション」「スルーホール銅」「クーポン」が title、description、H1、本文に自然に出現。
- 事実:品質ページの記載と QC-IPC のみ。抜き取り数、しきい値、歩留まり、事例は記載なし。
- 内部リンク:
/ja/リンク 7 件、すべてout/ja/に存在を確認。industries へのリンクなし。 - FAQ と本文の一致:6 問すべて本文の節に対応。
- REVIEW_REQUIRED:専門用語(ネイルヘッド、レジンリセッション、つきまわり)はネイティブ校閲で確認すること。
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FAQ
Q:断面観察とX線検査の違いは?
A:X線は非破壊で、はんだ接合、内部の位置合わせ、大きめのボイドに向きます。断面観察は破壊検査で、スルーホール銅厚の測定、内層接続分離や微小なめっき欠陥の発見ができます。
Q:スルーホール銅厚はなぜ最小値で報告すべきですか?
A:めっき厚は穴壁の位置によって異なり、信頼性は最も薄い箇所で決まります。平均値だけでは穴中央の薄さが隠れることがあります。
Q:電気検査に合格していても断面観察は必要ですか?
A:製品クラスによります。内層接続分離は常温で導通し電気検査を通ることがあり、断面、特に熱ストレス後の断面で見つかります。
Q:クーポンが合格なら基板全体も合格ですか?
A:クーポンに設計した穴の種類についてのみです。最小穴径、最大アスペクト比、ブラインド/ベリード構造を含めてください。
Q:熱ストレス後のレジンリセッションは不合格ですか?
A:注文で指定した IPC-6012 クラスの条項で判定します。層間剥離やスルーホール銅のクラックとは区別します。
Q:SKPCB は全ロットで断面観察をしますか?
A:同一ロットのテストクーポンで断面と熱ストレスを確認し、特殊構造や異常ロットには断面を追加します。項目と抜き取りは注文と製品クラスごとに決めます。
