製造図面の材料欄に「FR-4, High-Tg」とだけ書かれていることがよくあります。基板メーカーはこの条件を複数の積層板で満たせます。どれもTgは高いものの、鉛フリーリフローでの挙動は大きく異なる場合があります。Tgが答えるのは一つの問いだけです。樹脂が何℃でガラス状態から軟化するか。基板が層間剥離するか、スルーホールの銅が割れるかは、別の指標で決まります。
基材選定の全体的な順序は PCB基材選定の4つのフィルター で扱っています。本記事はそのうち熱特性のフィルターだけを掘り下げ、各指標が何を測り、どう試験し、図面にどう書くかを説明します。
熱特性指標の一覧
| 指標 | 意味 | 主な試験方法 | 主な影響 |
|---|---|---|---|
| Tg | 樹脂がガラス状態からゴム状態へ移る温度 | IPC-TM-650 2.4.25(DSC)/ 2.4.24(TMA)/ 2.4.24.4(DMA) | Tg以上でZ方向の膨張が急増 |
| Td | 樹脂の熱分解温度(通常5%重量減少点) | IPC-TM-650 2.4.24.6(TGA) | 複数回リフロー後の層間剥離・ふくれ |
| α1 / α2 | Tg以下 / 以上のZ軸熱膨張係数 | IPC-TM-650 2.4.24(TMA) | スルーホール銅にかかる引張ひずみ |
| 50–260℃ Z軸総膨張 | 室温付近からリフローピークまでの寸法変化(%) | IPC-TM-650 2.4.24(TMA) | 1回のリフローでの累積ひずみ |
| T260 / T288 | 260℃ / 288℃保持で層間剥離に至る時間 | IPC-TM-650 2.4.24.1(TMA) | 層間剥離に対する余裕 |
これらはいずれも積層板のデータシートとIPC-4101のスラッシュシートに項目があります。Tgだけを指定すると、表の1行目しか拘束しません。
Tgの値は測定方法で変わる
同じ積層板でも、DSC、TMA、DMAで得られるTgは異なります。DSCは比熱の変化、TMAは膨張曲線の屈曲点、DMAは弾性率の変化を見ており、DMAの値は他の2つより高く出るのが一般的です。データシートには測定方法が記載されています。2つのデータシートのTgを比べる前に、同じ方法で測定されているかを確認してください。
図面でTgの下限を指定する際は、測定方法も併記します。例:「Tg ≥ 170℃(DSC、IPC-TM-650 2.4.25)」。SKPCBが登録している高Tg材料の定義はTg >170℃です。
Tgが高くても層間剥離は防げない
TgとTdは別の現象です。Tgは可逆的な物理転移で、冷却すれば樹脂はガラス状態に戻ります。Tdは不可逆な化学分解で、発生したガスが層間や穴壁周辺に空隙をつくり、層間剥離やふくれとして現れます。
従来のジシアンジアミド(Dicy)硬化系はTgを高くできても、Tdが同じように上がるとは限りません。フェノール硬化系やフィラー入りの系は一般にTdが高くZ方向膨張が小さく、複数回の鉛フリーリフローに向いています。Tgがどちらも170℃を超える2つの材料でも、鉛フリーリフローを3回通した後の結果はまったく異なり得ます。それを決めるのはTdとT260/T288で、Tgではありません。
Z軸CTEとスルーホール銅の疲労
銅の熱膨張は、Tg以上でのエポキシのZ方向膨張よりはるかに小さい値です。基板を加熱すると樹脂が厚さ方向に膨張し、スルーホールの銅が引き伸ばされます。Tgを超えるとα2が効き、膨張が速くなります。リフローのピークは260℃付近で、どのFR-4のTgよりも高いため、毎回のリフローでα2の領域を通ります。
この影響は板厚とともに大きくなります。板が厚く穴が小さいほどひずみが集中し、高多層の厚板が材料選定に敏感なのはこのためです。アスペクト比と穴内の銅分布は 高多層基板のドリル加工アスペクト比とめっきつき回り を参照してください。SKPCBのPTHアスペクト比の上限は10:1です。
厚板や複数回リフローでは、α1やα2単独より50–260℃のZ軸総膨張のほうが直接的です。これは1回のリフローでスルーホール銅が追従しなければならない寸法変化そのものです。
高Tgが必要なケース
次の場合は、高Tgと関連する熱特性をあわせて指定することを勧めます。
- 板厚が大きい、または層数が多く、スルーホール銅の累積ひずみが大きい。
- 両面実装とリワークなど、鉛フリーリフローを複数回通す。
- 製品が長期間高温で動作し、標準FR-4のTg付近またはそれを超える。
- 厚銅層や大面積の銅があり、積層やリフロー時に内部の温度差が大きい。厚銅積層の樹脂充填は 厚銅基板の積層と樹脂充填管理 を参照してください。
高Tgが不要なケース
薄板で層数が少なく、リフロー1回で動作温度も高くない製品は、標準Tg材料で通常足ります。高Tg積層板は一般に硬くもろく、ドリルの摩耗が早く、価格も高くなります。熱ストレスの要求がないのに高Tgを指定しても、得られるのはコストであって信頼性ではありません。
本当の懸念が層間剥離であれば、Tgを上げるだけでなく、TdとT260/T288を直接指定するほうが確実です。
図面への書き方
「High-Tg」を受入条件に置き換えるには、次の構成が使えます。
- 材料区分:IPC-4101のスラッシュシート番号を記載するか、「供給者が積層板データシートを提出し設計者が承認」と記載。
- Tg:下限と試験方法。例「Tg ≥ 170℃(DSC)」。
- Td:下限と試験方法(TGA、5%重量減少)。
- Z軸膨張:50–260℃総膨張の上限、またはα1/α2の上限。
- 層間剥離時間:T260またはT288の下限。リフロー回数と板厚で選ぶ。
- 代替ルール:代替材は上記すべてを満たし、書面で確認すること。
UL認定は材料と板厚に別の制約を加えます。UL材料認定を積層構成の設計入力として読む を参照してください。多層基板の対応範囲と選べる材料は 多層PCB と 材料 にあります。具体的な積層構成で材料を評価する場合は 見積もり からデータをお送りください。
まとめ
Tgが制限するのは樹脂の軟化温度だけです。鉛フリーリフローでの層間剥離はTdとT260/T288、スルーホール銅の疲労はZ軸膨張で決まります。図面に「High-Tg」と書くときは、これらを試験方法とともに下限・上限として記載し、代替材の受入根拠を持たせてください。
セルフチェック
- 既存記事との重複:基材4フィルター記事はTg/Tdを1節で扱うのみ、UL認定記事は認定上の制約を扱う。本記事は熱特性指標と指定方法のみを掘り下げ、関連箇所は内部リンクで案内。
- 同日のPCB168:briefは未作成。本記事は材料技術記事であり、RFQチェックリストではない。
- キーワード:「高Tg」「FR-4」「Td」「Z軸CTE」をtitle、description、H1、本文に自然に配置。詰め込みなし。
- 事実:自社数値はMAT-TGとPCB-ARのみ。材料ブランドのデータ、歩留まり、価格、顧客事例は記載なし。
- 内部リンク:
/ja/リンク7件、すべてout/ja/に存在を確認。industriesへのリンクなし。 - FAQと本文の整合:6問すべて本文の節に対応。
- 日本語はネイティブ校閲が必要(REVIEW_REQUIRED)。
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FAQ
Q:TgとTdの違いは何ですか?
A:Tgは樹脂が軟化する可逆的な転移温度です。Tdは樹脂が熱分解を始める温度で、分解は不可逆であり、層間剥離やふくれの原因になります。
Q:同じ積層板なのにTgの値が複数あるのはなぜですか?
A:DSC、TMA、DMAはそれぞれ異なる物理変化を測るため、値が異なります。比較は同じ測定方法どうしで行ってください。
Q:Tg 170℃の材料なら必ず鉛フリーリフローに耐えますか?
A:必ずしもそうではありません。リフローピークはTgより高く、層間剥離への耐性は主にTdとT260/T288、スルーホールの信頼性はZ軸膨張で決まります。
Q:Z軸CTEがスルーホールに影響するのはなぜですか?
A:樹脂は厚さ方向に銅よりはるかに大きく膨張するため、加熱時にスルーホール銅が引き伸ばされます。板が厚いほど累積ひずみは大きくなります。
Q:多層基板はすべて高Tg材料にすべきですか?
A:いいえ。薄板でリフロー1回、動作温度も高くない場合は標準Tgで通常足ります。高Tg積層板は硬く、加工コストも高くなります。
Q:SKPCBの高Tg材料の定義は?
A:登録している定義はTg >170℃、高CTI材料はCTI >600Vです。具体的な材料は積層構成の評価で確認します。
