厚銅基板の積層品質管理:樹脂充填・ボイド・デラミネーションの判定

設計ガイド2026-10-10SKPCB技術チーム
厚銅基板の積層品質管理:樹脂充填・ボイド・デラミネーションの判定

1. 厚銅が変えるのは圧力ではなく「樹脂が流れる距離」

通常の多層板では内層銅が薄く、エッチング後の回路は基材表面にほぼ平らに載った模様に近い状態です。積層時にプリプレグの樹脂はこのわずかな段差を埋めるだけでよく、流動距離は短く抵抗も小さい。充填不足が起きるほうが例外です。

この内層銅を厚銅に置き換えると、模様が立ち上がって壁になります。配線間の隙間は浅いくぼみではなく、深く狭い溝に変わります。そして樹脂は、軟化から完全硬化までの限られた時間枠のなかで、その溝のすべてに流れ込み、埋め切らなければなりません。SKPCB の厚銅対応は 12 oz 超、16 oz と 18 oz は量産実績あり(凍結済みの能力表記)で、多層能力は 標準量産 40 層、最大 64 層 です。銅が厚く層数が多いほど、樹脂の経路は長く、埋めるべき溝は深くなります。

そのため厚銅の積層不良は対になって現れます。

  • 樹脂が足りない、または届かない → 溝底に空隙が残り、配線側壁が樹脂枯れになる。ボイドと充填不足として現れます。
  • 樹脂は届いたが応力が不均一 → 厚銅と樹脂の熱膨張差が硬化時に基板内へ閉じ込められる。デラミネーション、局所的な伸縮ミスマッチ、次に熱が加わったときの二次クラックとして現れます。

この二つは同じ問題の軽重ではありません。検出手法も受入基準も別に必要です。厚銅の積層で通常の多層板の受入基準をそのまま使えない根本理由がここにあります。

2. まず、混同されがちな三つの不良名を分ける

技術的なやり取りでは、この三語が互いに代用されがちですが、原因・発生位置・検出手法はいずれも異なります。用語の取り決めは、基準を取り決めるための前提です。

1. ボイド(void)

埋まるべき空間が樹脂で埋まらず、閉じた、あるいは半分閉じた空隙が残った状態。厚銅での典型的な位置は厚い内層配線の間の溝底と配線側壁と隣接層の境界です。ボイドの害は二重で、絶縁耐力の弱点であると同時に水分の滞留場所にもなります。その水分がリフロー熱で気化し、デラミネーションの起点になります。

2. 樹脂枯れ/充填不足(resin starvation)

樹脂は届いたが、連続した緻密な絶縁層を形成するには量が足りない状態。ボイドとの違いは、ボイドが「空いた箇所がある」ことであるのに対し、樹脂枯れは「全体が薄く、密度が足りない」ことです。明確な空洞の輪郭がないため、ボイドよりも外観では見つけにくく、通常は断面での樹脂とガラス布の分布比を見て初めて確認できます。

3. デラミネーション(層間剥離)

層と層の接合が失われ、界面が開いた状態。厚銅では、デラミネーションは積層の時点で割れていないことがほとんどです。積層は応力を埋め込むだけで、その後の熱工程(HASL、リフロー、リペアの加熱)が応力を解放します。ここが厄介な点で、積層後の初回検査は問題なく合格し、実装ラインで初めて顕在化します。

この三つを分けたうえで、次節の検査手法が対応づけられます。一つの手法で三つすべてを検出できるものはありません。

3. 厚銅の積層を実際に確認する検査手法

要点は、プレス記録は「設定どおりに動いた」ことしか証明せず、「基板内部が埋まった」ことは証明しないという点です。内部状態は検査で読み出す必要があります。SKPCB の品質体系は IPC-6012 Class II および Class III で受入れ、10 以上の検査関門を設け、全注文に 100% 電気検査(フライングプローブまたは治具)を実施します。厚銅の積層判定は通常、以下の手法に委ねられます。

断面観察(マイクロセクション)

厚銅の積層における中核的な判定手法で、代替はありません。溝底が埋まっているか、樹脂とガラス布がどう分布しているか、層間界面が連続しているかを直接見られるのはこの方法だけです。代償として破壊的であり、全数ではなく抜き取りになります。したがって取り決めるべきは本数よりも採取位置です。厚銅回路が最も密で溝が最も深い領域から採らなければならず、基板端の空いた場所では意味がありません。作製と観察は IPC-TM-650 の手法群に従います。

X 線検査

非破壊で、層ズレや大きめの内部異常に適します。ただし溝底の小さなボイドには感度が低く、厚銅は X 線の吸収が強いため、厚銅部のコントラストが落ちます。X 線は大きな問題のスクリーニングには使えますが、充填の判定で断面観察の代わりにはなりません。

超音波/音響スキャン

界面の接合不良(デラミネーション)に対しては X 線より感度が高く、音響インピーダンスの不連続を見る方式であるためです。剥離方向の非破壊での再確認に適します。

熱応力試験・信頼性試験

積層で埋め込まれ、まだ顕在化していない応力を、あらかじめ引き出すための手法です。制御された熱工程を基板に通し、そのあとデラミネーションやクラックを再検査します。SKPCB の品質表記にはロットごとの信頼性試験が含まれます。厚銅多層板では、この関門は外観検査より意味があります。第 2 節で述べた「初回検査は合格、実装ラインで発生」という不良モードを正面から狙うものだからです。

外観検査・自動光学検査(AOI)

表面と端部で見える異常(端部剥離、メジャリング、外層欠陥)を捉えます。内部の充填は見えません。位置づけは前段のスクリーニングで、積層品質の判定基準ではありません。

100% 電気検査

導通と絶縁の不良を捉えます。ボイドに起因する絶縁の弱点がすでに実際の短絡やリーク経路になっていれば、電気検査で検出できます。まだ絶縁破壊に至っていないボイドは見えません。「電気検査が全数合格」が「積層が合格」を意味しない理由です。

4. 設計・発注側で積層リスクを下げられること

積層品質は積層工程だけで決まるものではありません。相当の部分が設計段階で確定しています。

1. 銅の分布をできるだけ均等にし、厚銅の大面積ベタを片側に寄せない

同一層内の銅分布が偏るほど、樹脂が埋めるべき空間の差が大きくなり、硬化後の応力分布も非対称になります。反りと層間応力はこれに直結します。体系的な進め方は多層板の銅バランスと反り制御を参照してください。

2. 銅厚の混在は、全層を厚銅にするより扱いやすい

すべての層に厚銅が必要とは限りません。電流や熱を担う層だけ厚銅とし、残りを通常銅厚にすることで、樹脂充填の難度は明確に下がります。層構成の混ぜ方は厚銅多層板の銅厚混在スタックアップにあります。

3. 厚銅の配線間隔を限界に張り付かせない

間隔が狭いほど溝も狭く、樹脂が入りにくくなります。厚銅では間隔は電気的な問題だけでなく、工程成立性の問題です。あわせて、厚銅のエッチング補正が仕上がりの線幅と間隔を動かすことにも注意してください——厚銅のエッチング補正レビュー。

4. 板厚は層数と一緒に出す。層数だけでは足りない

SKPCB の板厚範囲は 0.2–6.0 mm です。厚銅多層板では銅そのものの体積が仕上がり厚を押し上げるため、「層数×標準厚」で見積もった仕上がり厚は積層段階で成立しないことが多くあります。厚み公差の考え方はPCB 仕上がり板厚の公差管理を参照してください。

5. 材料は初期特性だけでなく、その後の熱履歴で選ぶ

厚銅構成における高 Tg・高 CTI 材料の価値は、主にその後の熱衝撃への耐性に出ます。SKPCB が常備する高信頼材料には Isola 370HR、ITEQ IT-180A/IT-158、Shengyi S1000-2 があり、高 Tg 170°C 超、高 CTI 600V 超の選択肢を提供しています。図面に「高 Tg」と書くだけよりも、具体的な材料型番を IPC-4101 の規格体系に照らしてメーカーと突き合わせるほうがはるかに有効です。

6. PTH アスペクト比に余裕を残す

SKPCB の表記上の上限は PTH で 10:1 です。厚銅多層板は仕上がりが厚くなりやすいため、穴径を小さくするとこの境界にすぐ触れます。そして穴の問題は積層品質の問題と重なって現れます。

5. 受入基準を取り決めるとき、以下を書き込む

厚銅の積層でよく起きる争点は「作りが悪かった」ではなく「何を合格とするか決めていなかった」です。次の 6 項目は技術協定書または発注書の添付に直接書き込んでください。

  1. 受入クラス:IPC-6012 Class II か Class III かを明示します。産業用・電源用途の厚銅多層板では、Class III の層間要求のほうが実際のリスクに近いです。SKPCB はどちらでも対応します。
  2. 断面の採取位置:本数だけでなく「厚銅が最も密で間隔が最小の領域から採取」と明記します。位置を誤れば、何枚断面を採っても充填品質の証明になりません。
  3. 熱応力後の再検査を要求するか:厚銅基板で最も投資価値のある一関門です。積層後の初回検査だけでは遅れて出るデラミネーションを見つけられません。
  4. 仕上がり厚と公差:層数と各層の銅厚とあわせて提示します。メーカーに逆算させないことです。
  5. 材料型番:「高 Tg」のような記述ではなく型番で指定し、同等品代替の可否も記載します。
  6. 不良用語の定義:ボイド、樹脂枯れ、デラミネーションを第 2 節のとおり分けて定義し、同じ語で別のことを指す状態をなくします。

参考値として、SKPCB が公表する出荷合格率は 99.8%(定義=生産ロットごとの「出荷良品数÷生産総数×100%」)、廃棄率は 0.3% 未満(「廃棄数÷生産総数×100%」)です。これらはロット統計であり、個別の厚銅案件に対する約定ではありません。だからこそ上記 6 項目を一つずつ取り決める必要があります。

6. 一文でまとめると

厚銅の積層品質を決めるのはプレス機の設定ではなく、銅と樹脂の体積比が樹脂に埋められる空間を残したか、そして内部状態を適切な検査手法で読み出したかです。ボイド、樹脂枯れ、デラミネーションは別個の三つの不良で、三通りの判定を必要とします。なかでも遅れて出るデラミネーションは、熱応力後の再検査でしか捉えられません。設計側で最も効くのは、銅分布を均等にすること、銅厚を混在させること、間隔を限界に置かないことです。

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セルフチェック

  • 中心となる問いは一つで、同日の slot 1(ステンシル印刷時の基板バックアップ)および slot 2(フレキ基板の外形切断)と重複なし。本稿は厚銅積層の不良判定と受入基準のみを扱う。
  • 数値はすべて凍結済み CLAIM_REGISTER の項目のみ:PCB-COPPER(12 oz 超、16/18 oz 量産実績)、PCB-LAYERS(40/64)、PCB-THICK(0.2–6.0 mm)、PCB-AR(10:1)、QC-IPC(IPC-6012 Class II & III)、Q-ETEST、Q-GATES(10 以上)、Q-PASS(99.8%、定義付き)、Q-SCRAP(0.3% 未満、定義付き)、MAT-TG、MAT-REL。
  • 積層温度、圧力、昇温速度、樹脂流動量、ボイド率、引き剥がし強度、Tg シフト、伸縮係数、断面判定寸法、装置型番はいずれも記載なし。
  • IPC-6012/IPC-TM-650/IPC-A-600/IPC-4101 は規格名のみで引用し、条項の数値は再掲しない。
  • 内部リンク 9 件(blog 6 本 + 製品ページ 2 件 + 品質ページ)、すべて ja ロケールで out/ に実在を確認。未公開の業種ディレクトリへのリンクは使用せず。
  • カバーの alt は確認済みの画像内容のみを記述し、プレス機や断面研磨装置とは書かず、数値を含まない。
  • REVIEW_REQUIRED:日本語ネイティブ校閲が未完了。

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FAQ

Q1:厚銅の積層で生じたボイドは X 線で見つかりますか。

大きな異常は見つかりますが、溝底の小さなボイドは確実ではありません。厚銅は X 線の吸収が強く、厚銅部のコントラストが落ちます。最も見たい領域がいちばん見えにくいことになります。X 線は層ズレと粗い欠陥のスクリーニングに適し、充填の判定は断面観察で行います。

Q2:積層後の検査は全項目合格でした。なぜ実装時にデラミネーションするのですか。

厚銅と樹脂の熱膨張差が積層時に基板内へ閉じ込められ、その時点ではまだ解放されていないためです。HASL、リフロー、リペア加熱が解放条件を与え、そこでデラミネーションが顕在化します。対策は納入前の熱応力試験で先に引き出すことであり、積層後の外観検査を厳しくすることではありません。

Q3:銅が厚いほど積層不良は増えますか。

相関はありますが、唯一の変数ではありません。難度を決めるのは銅厚・回路密度・間隔の組み合わせです。間隔に余裕のある厚銅のほうが、限界間隔の中銅厚より作りやすいこともあります。見積もりと DFM の段階でこの三つをまとめて提示してください。銅厚だけではリスクを判断できません。

Q4:全層厚銅と銅厚混在では、どちらが安定しますか。

通常は混在のほうが安定し、かつコストも下がります。電流や熱を担う層だけを厚銅にし、残りを通常銅厚とすることで、樹脂充填の難度と銅分布の偏りによる応力を同時に下げられます。詳細は厚銅多層板の銅厚混在スタックアップ。

Q5:断面観察は破壊検査です。量産では全数をどう担保するのですか。

単一の手法ではなく組み合わせで担保します。断面観察は工程ウィンドウとロット代表性の検証に用い、電気検査が 100% の全数確認を担い(SKPCB は全注文に実施、フライングプローブまたは治具)、さらにロットごとの信頼性試験と複数のインライン関門(検査関門 10 以上)を重ねます。断面観察は「この工程でこう作れば正しい」ことを示し、全数検査とロット試験は「このロットが実際にそのとおり流れた」ことを示します。

Q6:積層リスクを評価するために、発注時に最低限必要な情報は何ですか。

層数、各層の銅厚(内層・外層を区別)、最小線幅/最小間隔、仕上がり板厚と公差、材料型番または同等要求、IPC 受入クラス、熱応力後の再検査が必要かどうかです。「各層の銅厚」と「最小間隔」が欠けると、リスクは評価できません。

電流容量と放熱設計を評価しますか?

銅厚・線幅・温度上昇は一体で検討する必要があります。電流と周囲温度をお知らせいただければ、銅厚と製造可能な線幅/間隔をご提案します。