多層基板の製造工程は、順番を入れ替えられる作業の集まりではありません。内層は積層プレスされた時点で二度と見えなくなり、穴はあけた時点で位置と径が決まります。設計データの各パラメータは、特定の工程で「使われ」、そこで確定します。この順序がわかれば、出図前に何を確定すべきか、どの不足が技術問い合わせ(EQ)として戻ってくるかが見えてきます。
SKPCB の通常の多層基板は最大 40 層です。層数が増えると工程の繰り返しは増えますが、基本の順序は変わりません。
工程一覧表
| 区分 | 主な工程 | 使う設計データ | 確定するもの | 後戻り |
|---|---|---|---|---|
| 内層 | 材料切断、内層パターン、エッチング、内層 AOI | 積層構成表、内層ガーバー、コア厚と銅厚 | 内層回路、内層の銅分布 | AOI 後は不可 |
| 積層 | 黒化(粗化)処理、レイアップ、プレス | 層順、プリプレグ品種、目標板厚 | 絶縁層厚、層順、板厚の基礎 | 不可 |
| 穴あけ | 機械ドリル(レーザー、バックドリル) | ドリルデータ、穴径表、穴の種類 | 穴位置、ドリル径 | 不可 |
| スルーホールめっき | デスミア、無電解銅、パネルめっき | 穴銅の要求、アスペクト比 | 穴壁銅の基礎 | 不可 |
| 外層 | 外層パターン、パターンめっき、エッチング、外層 AOI | 外層ガーバー、外層銅厚、線幅/間隔 | 外層回路、最終銅厚 | 不可 |
| 表面 | ソルダーレジスト、表面処理、シルク | レジスト層、開口、表面処理種類、シルク層 | レジスト開口、はんだ付け面 | 一部手直し可 |
| 仕上げ | 外形加工、電気検査、最終検査、梱包 | 外形図、面付け図、ネットリスト、受入基準 | 外形寸法、導通 | 不可(外形) |
最も重要なのは「後戻り」の列です。積層以降、ほぼすべての工程が前工程の結果を基板の中に封じ込めます。
内層:切断、パターン形成、エッチング、AOI
材料切断では積層構成表に合わせてコア材を選びます。コア厚と銅厚はここで決まり、後から交換できません。内層パターン形成で内層ガーバーを銅面に転写し、エッチングで不要な銅を除去します。内層の最小線幅/間隔は標準 4/4 mil です。
内層 AOI は、内層回路を直接見られる最後の機会です。積層後は内層の断線・短絡・欠けを電気検査で間接的に見つけるしかなく、修理もできません。判定の考え方は 内層 AOI は一方向の出荷判定 を参照してください。
積層:粗化処理、レイアップ、プレス
粗化処理で内層銅の表面を粗くし、プリプレグとの密着を高めます。レイアップではコア、プリプレグ、外層銅箔を指定の順に重ね、プレスで樹脂を流動・硬化させます。
積層で確定するのは、層順、絶縁層厚、板厚の基礎の三つです。絶縁層厚はインピーダンスを左右するため、インピーダンス目標は積層構成表に絶縁層と一緒に記載します。層間ずれもここで生じ、穴あけに引き継がれます。詳しくは 多層基板の積層位置合わせ を参照してください。
穴あけとスルーホールめっき
積層後のパネルにドリルデータどおり穴をあけます。ブラインド・ベリードビア構造では、レーザー加工や逐次積層が加わります。機械ドリルの最小径は標準 0.2 mm、0.15 mm は技術レビューが必要な高度能力です。
スルーホールめっきでは、まず穴壁のスミアを除去し、無電解銅で導電性を持たせ、電解めっきで厚くします。穴が深く細いほど中央まで銅が付きにくいため、スルーホールの最大アスペクト比は 10:1 で管理します。板厚と最小穴径は合わせて考える必要があります。詳細は 高多層基板の穴あけとアスペクト比 にあります。
外層:パターン形成、めっき、エッチング
外層パターン形成で外層ガーバーをパネルに転写し、パターンめっきで回路と穴壁を最終銅厚まで厚くし、エッチングで回路を仕上げます。外層の最小線幅/間隔は標準 4/4 mil です。外層銅が厚いほどサイドエッチが大きくなり、保てる最細線幅は太くなります。
外層の最終銅厚は「ベース銅+めっき銅」で、積層構成表の一つの数字ではありません。図面に「外層 1 oz」とだけあると、メーカーはベース銅か仕上がり銅かを確認する必要があります。めっき後の検査は PCB めっき品質検査と出荷判定 を参照してください。
ソルダーレジスト、表面処理、シルク
ソルダーレジストは回路を覆い、パッドを露出させます。表面処理(ENIG、HASL、OSP など)は露出した銅を保護し、はんだ付け性を決めます。シルクは部品番号や識別表示を印刷します。この区分は局所的な手直しが可能な数少ない工程ですが、外観と信頼性に影響するため、設計上の余裕とみなすべきではありません。
外形加工、電気検査、最終検査
外形加工ではルーター、V カット、打ち抜きで外形を仕上げ、面付けがここで形になります。SKPCB は全注文の 100% をネットリストに基づき、フライングプローブまたは専用治具で電気検査します。方式の選び方は フライングプローブと治具検査の比較 を参照してください。最終検査後に出荷し、原材料から完成品まで QR コードでトレースできます。
出図前に確定すべき情報
- 積層構成表:層順、コアとプリプレグの厚さ、各層の銅厚(ベース銅か仕上がり銅かを明記)
- 目標板厚と公差(SKPCB の板厚範囲は 0.2〜6.0 mm)
- インピーダンス目標、リファレンス層、線幅
- ドリルデータと穴径表:仕上がり穴径、穴の種類(PTH/NPTH/ブラインド/ベリード/バックドリル)
- 内層・外層ガーバー、レジスト開口、表面処理の種類
- 外形図、面付け要求、基準
- ネットリストと受入基準
どれか一つでも欠けると、メーカーは該当工程の手前で止まり、EQ を出すことになります。対応範囲は 多層基板の製品ページ で確認でき、資料が揃ったら 見積もりページ から送付できます。
まとめ
多層基板の工程の原則は単純です。積層以降、ほぼすべての工程は後戻りできません。内層は AOI の後に見えなくなり、絶縁層はプレスで、穴は穴あけで、銅厚はめっきで確定します。設計データがどれだけ揃っているかで、工程が一度で流れるか、どこかで回答待ちになるかが決まります。
自己チェック
- 既存記事との重複:樹脂流動、位置合わせ、内層 AOI、アスペクト比、めっき出荷判定、層数・積層構成の判断はそれぞれ既存記事。本記事は工程全体の一覧と後戻り不可ポイントの整理で、各区分は結論一文と内部リンクのみ。
- 同日の PCB168:brief 未作成。本記事は製造工程の解説であり、RFQ・調達チェックリストではない。
- キーワード:「多層基板」「製造工程」「積層」「穴あけ」が title、description、H1、本文に自然に出現。詰め込みなし。
- 事実:数値は CLAIM_REGISTER の verified 項目のみ。工程時間、設備メーカー、歩留まり、価格、納期、顧客事例なし。
- 内部リンク:
/ja/リンク 7 本、すべてout/ja/で存在確認済み。industries へのリンクなし。 - FAQ と本文の一致:6 問すべて本文の論点に対応。
- 日本語はネイティブ審校が必要(REVIEW_REQUIRED)。
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FAQ
Q:なぜ内層を先に加工してから積層するのですか?
A:積層すると内層回路は基板の内部に封じ込められます。パターン形成、エッチング、AOI は積層前に終える必要があり、積層後は加工も修理もできません。
Q:どの工程の後なら設計を変更できなくなりますか?
A:厳密には内層エッチングからです。設計への影響が最も大きいのは、積層(層順と絶縁層厚)と穴あけ(穴位置と穴径)です。
Q:インピーダンスはどこで決まりますか?
A:絶縁層厚は積層で、線幅はエッチングで決まり、両者でインピーダンスが決まります。目標値は積層構成表と一緒に提出してください。
Q:図面に「外層銅 1 oz」と書けば十分ですか?
A:それだけでは不十分です。外層銅はベース銅とめっき銅の合計です。どちらの値かを明記しないと EQ になります。
Q:SKPCB は何層まで製造できますか?
A:通常の多層基板は最大 40 層です。スルーホールの最大アスペクト比は 10:1、機械ドリルの最小径は標準 0.2 mm です。
Q:すべての基板を電気検査しますか?
A:はい。SKPCB は全注文の 100% を、ネットリストに基づきフライングプローブまたは治具で検査します。
